熱中症にご用心

権藤内科循環器科
院長 権藤 秀之


熱中症にご用心

 この夏、梅雨明けした7月17日から29日までの約半月間に、熱中症による死者が全国で200人を超えたそうです。約9割が65歳以上の高齢者で、自宅など屋内での死亡例も目立ちます。草むしりなどの農作業や散歩の途中に倒れるひとも多いです。老夫婦が窓を閉め切った自宅マンションで死亡していた例もあります。 

熱中症にならないための注意する点を書いてみました。

 熱中症という用語は、読んで字のとおり、「熱に中(あた)る」という意味です。
専門的には日射病や熱射病などの総称で、 高温下での運動や労働のため、発汗機能や循環系に異常をきたして起こる病気。体温上昇、発汗停止とともに虚脱・けいれん・精神錯乱・昏睡などを起こし、生命の危険を伴うこともある病態です。
日差しが強く、気温が上昇する夏場は思いがけず症状の進行も早いので要注意です。

熱中症になるわけ

 ヒトには体温を調節するしくみがあり、次のように対応して体温を下げます。
 1)皮膚の表面の血管を広げて空気中へ熱を放出する。
 2)汗をかき、その汗が蒸発するときに熱を奪うはたらき(気化熱)で体温を下げる。
体温よりも気温が低ければ、皮膚から空気中へ熱が放散し、体温の上昇を抑えることができます。また、湿度が低ければ汗をかくことで熱が奪われ、体温を上手にコントロールすることができます。

 しかし、気温が体温に近くなると、空気中への熱の放出が難しくなるため、体温調節は発汗だけに頼ることになります。ところが夏日によくあるように、気温が高いばかりでなく、湿度も75%以上になると、汗をかいても流れ落ちるばかりでほとんど蒸発しなくなり、発汗による体温調節すら事実上できなくなってしまいます。

 さらに体温が37℃を超えると皮膚の血管が拡張し、皮膚の血液量を増やして熱を放出しようとしますが、このとき体温がさらに上昇し、発汗などによって体の水分量が極端に減ると、今度は心臓や脳を守るために血管が収縮します。つまり、ここでも熱が放出できなくなってしまうのです。
 熱中症は、こうして体温を調整する機能がコントロールを失い、体温が異常に上昇してしまう機能障害です。実は、炎天下ばかりでなく、室内で静かに過ごしていても起こり得ます。実際、高齢者が室内で熱中症になって倒れているのを発見されるというケースも少なくありません。

熱中症の分類
大きく分けて以下の4つに分けられます

  症状 主な原因
熱失神 めまいがしたり、失神したりする。 高温や直射日光によって血管が拡張し、血圧が下がることによって生じる。
熱けいれん 暑いなかでの運動や作業中に起こりやすい、痛みを伴った筋肉のけいれん。脚や腹部の筋肉に発生しやすい。 汗をかくと、水分と一緒に塩分も失われるが、この熱けいれんは血液中の塩分が低くなり過ぎて起こる症状。
水分を補給しないで活動を続けたときはもちろん、水分だけを補給したときにも発生しやすい。病院で生理食塩水(0.9%)を補給すれば通常は回復します。
熱疲労 たくさんの汗をかき、皮膚は青白く、体温は正常かやや高め。
めまい、頭痛、吐き気、倦怠感を伴うことも多い。
体内の水分や塩分不足、いわゆる脱水症状によるもの。
死に至ることもある熱射病の前段階ともいわれ、この段階での対処が重要となる。
熱射病 汗をかいておらず、皮膚は赤く熱っぽく、体温は39℃を超えることが多い。
めまい、吐き気、頭痛のほか、意識障害、錯乱、昏睡、全身けいれんなどを伴うこともある。
水分や塩分の不足から体温調節機能が異常をきたした状態。そのままでは死に至ることもある。
極めて緊急に対処し、救急車を手配する必要がある


熱中症の起きやすい人

次のような人たちは熱中症にかかりやすいので要注意です。

  • 子供、乳幼児
  • 高齢者
  • 肥満者
  • 風邪を引いている人
  • 暑さになれていない時期
  • 我慢強い人
  • 普段から運動をしていない人
  • 心疾患、循環器障害などの慢性疾患のある人
  • 日中の暑い時間帯に屋外で仕事をする人
  • 頻繁に屋外で運動をする人
  • 発汗に影響のある薬剤を使用する人
  • アルコールや薬物の乱用がある人

高齢者はとりわけ熱中症になりやすいのですが、そのわけは

1)暑さを感じにくくなる
 体の温度を感じるセンサーがにぶっています
2)体温調節能力の低下
 加齢に伴い汗腺も減っていて発汗量が減少している
3)水分摂取量が少なくなる
 夜間の頻尿や尿漏れの心配から水を飲むのを我慢してしまう

などによります。

熱中症にならないために
熱中症は、ちょっとした注意で防ぐことができます。普段から心掛けて欲しいポイントを挙げてみました。

1)体調を整える
 睡眠不足や風邪ぎみなど、体調の悪いときは暑い日中の外出や運動は控えましょう。
2)服装に注意
 通気性の良い洋服を着て、外出時にはきちんと帽子をかぶりましょう。
3)こまめに水分補給
 定期的に少しずつ水分を補給しよう。特に老人は喉が渇いていなくても2〜3時間おきに水分を取るようにしましょう。夏場は汗と一緒に塩分が失われることを考えると、0.1%程度の塩水(コップ1杯の水にひとつまみの食塩或いは1リットルの麦茶に梅干し半分を入れる)またはスポーツドリンクがおすすめです。
4)年齢を考慮する
 体内の機能が発育途中の子どもや、体力が衰えた高齢者は熱中症になりやすいです。家族や周りの人が注意してあげましょう。

熱中症になってしまったら

涼しい日陰やクーラーの効いた室内などに移動する
 高齢者はクーラーを嫌う傾向がありますが、必要に応じて冷房を入れましょう。
衣類をゆるめて休む
 氷や冷たい水でぬらしたタオルを手足に当てる。首筋や脇の下など血管が体表近くを走っているところを冷やすと効果的です。
体を冷やす
 氷や冷たい水がない場合は、タオルやうちわ、衣服などを使ってあおぎ、風を送って冷やしましょう。
水分を補給する
 このとき、水分だけではなく、汗によって失われた塩分も補給する必要があります。
0.1%くらいの塩水か、スポーツドリンクを少しずつ何回にも分けて補給しましょう。

意識がはっきりしない場合は
 反応が鈍い、言動がおかしい、意識がはっきりしない、意識がない。こういった場合はすぐに救急車を呼んでください。同時に、上に書いているような応急処置をしておきましょう。

症状が回復しても一度は病院へ
 回復したつもりでも体内に影響が残っていたり、再発のおそれもあります。熱中症になったら、回復した後でも一度は病院で診てもらいましょう。

回復後もしばらくは静かにすごそう
 熱中症になった後は、病院を受診して大事をとるとともに、しばらくの間は体をいたわる生活をする必要があります。くれぐれも「もう大丈夫」とばかりに、翌日からまた活発に活動をはじめる、なんて無謀なことをしないようにしてください。

“水分補給にビール”は大きな間違い
 健康な大人でも、ビールなどのアルコール類は利尿作用があるため、脱水状態になることがあります。“スポーツの後、渇いたのどにビール”というのは、実は大きな間違いです!

 熱中症を予防して快適に夏を過ごしましょう。