摂食・嚥下障害について
聖和記念病院
内科 蓮尾 春高

 食べると言う行為は口から栄養を摂取し生きるための本能であるばかりでなく、食物を五感で味わい、会話や交流を楽しみ人間らしく生きる大切な営みでもあります。しかし摂食・嚥下の機能に障害があると食物や水分でむせる、のどに詰まらせるなどして、うまく食べられなくなります。ときに気道(喉頭や気管)に入ってもむせない人があり、摂食・嚥下障害に気づかない場合があり注意を要します。

摂食・嚥下障害を引き起こす主な病気
 
@ 通り道の障害:異物、腫瘍、外傷や炎症やその瘢痕、奇形など
 A 送り込む動きの障害:脳血管障害、変性疾患(パ−キンソン病、筋萎縮性側索硬化症)、
   筋疾患(筋ジストロフィ−、重症筋無力症)、内分泌・代謝性疾患(アミロイドシス)など

摂食・嚥下障害の評価・検査;看護師、言語聴覚士の協力のもと医師が診断します。
 @ 簡易検査:水飲みテスト、反復唾液嚥下テストなど。
 A 嚥下造影(VF)検査:X線透視下で嚥下の様子を観察しスロ−ビデオで再生し診断します。
 B 嚥下内視鏡(FEES)検査:経鼻内視鏡で咽頭や喉頭の動きを直接観察します。

摂食・嚥下障害が引き起こす問題:生命にかかわる場合があります。
 @ 誤嚥性肺炎:口腔内の細菌を誤嚥して起こす肺炎。熱が出ない場合もあり要注意です。
 A 窒息:食物が気道を塞ぎ呼吸困難に陥る。あわてず早急かつ的確な対応が必要です。
 B 脱水:水分は特にむせやすいため脱水に陥りやすい。皮膚の乾燥や尿量減少に注意。
 C 低栄養:必要な栄養が摂取できず体重が減少します。むくみも出てきます。

摂食・嚥下障害の治療;対象は限られます。肺炎予防のため口腔清潔は全員に必要です。
 @ 外科的治療:腫瘍や瘢痕や奇形などによる閉塞や狭窄には外科的治療を行います。
 A リハビリテ−ション:嚥下能力のレベルに合わせて言語聴覚士が行います。
  @) 間接訓練:飲食物を使わず摂食・嚥下に関わる器官の機能回復訓練を行います。
  A) 直接訓練:飲食物を使って摂食・嚥下の実際の場面での機能回復訓練を行います。

摂食・嚥下障害患者の栄養法:治療困難な場合は、生命維持のため以下の方法を単独または併用します。
 @ 経管栄養法:胃に水分や栄養が入り自然な消化吸収が行われ、薬も注入出来ます。
  @) 経鼻経管栄養:鼻から胃まで管を入れ栄養等を注入します。
    鼻から管を入れるときだけ少し痛みます。
    入った後は目障りで鼻の不快感を伴い、美的にも優れません。
  A) 胃ろう(PEG):上腹部の皮膚に局所麻酔で小さな穴を開け管を胃に入れます。
     約15分の簡単な手術で内科でも行います。
     術後1〜3日目から水分や栄養を少しずつ開始します。
     経鼻経管栄養の短所を補い、また嚥下訓練や経口摂取と平行して行うことも可能です。
 A 経静脈栄養:静脈に水分や栄養をゆっくり入れる方法です。
  @) 末梢静脈輸液(いわゆる点滴):四肢の静脈に針を刺し固定して行います。
     水分量に対し栄養は少ししか入れられません。四肢を動かすと漏れることがあります。
  A) 中心静脈栄養(IVH):頸・鎖骨下・鼠頸(股)のいずれかから心臓近くの中心静脈まで
     管(カテ−テル)を入れます。
     高カロリ−の輸液が出来、心不全・腎不全患者での管理が容易です。