◎はじめに 運動や身体活動にはエネルギーを使用するが、人では長時間のエネルギー使用には酸素を必要とするので、エネルギーの使用量は酸素の使用量として表現することが出来る。 運動において、酸素を必要とする有酸素運動(有気的代謝)と酸素の助けなしでエネルギーを出す無酸素運動(無気的代謝)がある。
これらの代謝は別々に有るのではなく、約1〜2分間持続する無気的代謝は短時間の激しい運動と関連性が高く、有気的代謝は4分以上持続する強度の低い運動時に利用される傾向にある。エネルギーの使う際にはATP(アデノシン三リン酸)の使用が必要であるが、ATPは@CP(クレアチンリン酸)A無気的解糖B有気的解糖の3っの方法で産生される。@のエネルギー変換は30秒程度Aの酸素を必要としない解糖は2分程度の持続Bの酸素を必要とする解糖は2〜4分から制限なく持続可能で解糖し、エネルギーを産生する。 健康運動即ち有酸素運動はこのBの解糖系のエネルギーを利用する運動でエアロビック運動と言われる。
◎有酸素運動・無酸素運動の違い、持続性と筋線維 最大運動の持続時間から有酸素運動、無酸素運動の比率をみると、 最
大 運 動 時 間 | | 10秒 | 30秒 | 60秒 | 2分 | 4分 | 10分 | 30分 | 60分 | 120分 | 無酸素 | 90% | 80 | 70 | 50 | 35 | 15 | 5 | 2 | 1% | 有酸素 | 10% | 20 | 30 | 50 | 65 | 85 | 95 | 98 | 99% |
上表のように運動の持続時間が長くなると、ほとんど有酸素運動になる。 筋肉の筋線維は大きく分けると白筋(速筋)と赤筋(遅筋)の二種類で、白筋は収縮力は大きいがエネルギーに酸素を必要としない無酸素系で、瞬発力が大きく短時間しか働かなく、持久力はない。それに比べ赤筋は酸素を使ってエネルギーを出すので、長時間の運動が出来る。白筋の比率が高いのはお相撲さん、重量級の柔道選手、短距離走選手に多い。 赤筋の比率が高い人は長距離走、マラソン選手など持久力が優れている。人では大体の白・赤筋の比率は先天的に決まっていて、白筋が多い人は脂肪が付き易いので小太りの方が多い。赤筋の多い人はやせ型の方にみられるが、大半の方では白筋・赤筋の比率は五分五分や六分四分の方が多いように思われる。高齢者では白筋が少なくなり赤筋の比率が高い。 ◎運動プログラム @(有酸素運動)持久力トレーニング プログラムの進行は運動耐容能、医学的健康上の状態、年齢、個人の好み、その時点のトレーニングの状態で変るが、運動処方には三つの進行段階があり、即ち初期、向上期、維持期がある。一般的に運動指導員は健康運動のために中等度の強さで30分ぐらいの運動を勧めるが、健康に見えるが身体活動量の少ない人や高齢者、疾患を持った人を対象にする場合は階段的にプログラムを作製してトレーニングを進展させる必要がある。
I 初期段階 | 週 | 運動頻度(回/週) | 運動強度(%) | 運動時間(分) | 1 | 3 | 40〜50 | 15〜20 | 2〜4 | 3〜4 | 40〜50 | 20〜30 | U 向上期段階 | 5〜24 | 3〜4 | 50〜70 | 30〜40 | III 維持段階 | 24+ | 3〜5 | 50〜80 | 40〜60 |
A(無酸素運動)筋力トレーニング 無酸素運動として抵抗運動(レジスタンス・トレーニング)がある。肥満の高齢者や糖尿病、脂質異常症など有酸素運動だけでなく無酸素運動を併用して、混合運動をしたほうがインスリン抵抗性は改善する。 レジスタンス・トレーニングは交感神経を緊張させるので、心拍数は上昇するが、有酸素運動のように酸素摂取量とは平行しない。だから筋力トレーニングの場合は心拍数は運動強度の指標にはならない。しかし、筋力、筋持久力が増加するので心肺系の持久力は数%程度は増加する。 筋力トレーニングの場合は強度の設定が難しい。比較的軽い重量(抵抗)でどのくらい出来るかをみて、最大筋力を推定する。一回しか出来ない重さ即ち筋肉が疲労しそれ以上できない重さを推定して、それを1RMとする。その何%か、また軽く何回出来るかを試行して、例えば10回出来る重さを10RMとする。筋力と筋持久力をを向上させ、骨粗しょう症の予防やインスリン抵抗性を改善するには大体8〜12RM程度の反復運動を目標に、それを二〜三セット行うと良い。筋力トレーニングの際は、どの筋肉をトレーニングしているかを意識して行う必要がある。 また、前日にトレーニングして筋肉に疲労が残っている場合は、その筋肉のトレーニングはしない。筋肉に力を入れる時は必ず息を吐き出す時に行う。呼気時に力を入れないと血圧が上がるし、不整脈も出やすい。Borgの自覚的運動強度で言えば「かなりキツイ RPE15」以上のトレーニングはしない。
B柔軟性トレーニング 関節の可動域を充分維持し筋腱の柔軟性を高めるストレッチングは骨格筋〜腱群を伸ばすことにより柔軟性を向上させる。柔軟性の低下は20歳台から始まるので、高齢者では骨格筋の筋力低下とともに起こる柔軟性低下が日常の活動度も低下させる。柔軟性は一過性であるから、毎日行う必要がある。柔軟性は個人差が大きいので、個別に判断する。ストレッチングは大きく分ければ静的と動的の二つにわけられる。静的ストレッチングは可動域ぎりぎりまで(痛みを伴わない範囲で)筋肉をゆっくり伸ばしていき、その姿勢を一定時間(15秒〜30秒)保つ。15秒までは柔軟性は向上するが、30秒以上しても効果は期待できない。回数は2〜4回が適当とされている。動的ストレッチングは最大可動域まで繰り返しストレッチングをするが、オーバーな可動域になるとかえって筋肉が収縮してしまう怖れがある。健康運動には静的ストレッチングが好まれる。 スポーツ医学の分野で世界的にスタンダードとされている ACSM(アメリカン カレッジ オブ スポーツ メディシン)のガイドライン第7版から一部引用した。
平成21年6月 |