「変な趣味」

小郡市 西原 貫二 

 僕は何の因果か、お酒を一滴も飲めない。先祖が造り酒屋を、絞め殺した崇りかもしれない。採血される時、アルコール綿花で、上腕部を消毒されただけで、2〜3時間その部分がじんましん様に腫れ上がる。僕を殺すには、ウイスキーを10ml静注すれば即死するだろう。
 つまり、夕食は10分で終わり、その後寝るまで、長い長い暇で寂しい時間が、たっぷりある訳だ。テレビも面白くないし、勉強や仕事もしたくない。仕方なく、才能もないのにあれこれ手を出した。
 麻雀は学生の頃から、つい最近まで週1回のペースでしていたが、勘は悪いし、雀敵があまりに血も涙もないので止めた。(というより脱落した。)碁は自称3〜4級で、医師会囲碁部のお荷物。謡曲は観世流で15年も続いているが、あくまでもただの素人さん。ゴルフは月2〜3回のアベレージゴルファー。女房もゴルフを始めて、今や猛追されているが、まだ大丈夫。(かな。)読書は乱読で、何の好みもない。落語は毎夜イヤホーンで聞きながら、笑いながら寝ている。支持政党も選挙権をいただいてから、ず−と、自由民主党。正月と祭日には必ず国旗を自宅と診療所に掲げるが、ぐるっと周りを見渡しても最近はほとんど見かけないので、これも趣味にいれておく。一昨年より近所の花屋さんから、花の苗を買ってきて鉢に植え、敷地のあちこちに100鉢くらい育てているが、さすがに植物の生殖器は美しい。動植物をかわいがる人は、寂しい人と何かに書いてあったが、少し当っている。パソコンだけはどうしても好きになれないが、医師会執行部からの命令で、しぶしぶ触っている。
 しかし、格式ある県医報に投稿するのだから、正直に書きますが、僕の本当の趣味は便所掃除です。診療所の便所は毎朝必ず洗い流している。自宅の便器もたまにやる。風呂のタイルも気が乗ると磨く。これだけは開業以来26年間、旅行か風邪で寝ているとき以外は欠かした事がない。僕は決してきれい好きではない。書斎はちりが積もっているし、寝室のふとんの枕元は、落語のCDや本が散乱している。奥さんも片付ける根気を無くしている。早朝か寝る前に洗剤を便器にかけて、タワシでゴシゴシやるが、男の小便の方は、足元のところが汚れているので、乾いた雑巾でふいておく。一番いやなのは梅雨時で、タイルが湿っているので、乾燥機を備え付け、新聞紙を広げて朝までひいておくと気持ちが良い。数年前、イエローハットの社長さんが、便所掃除の意義を話しておられたが、僕には何の理由も無い。しいて云えば、おしっこと便を検体として商売上の情報を沢山得ているので、それに感謝してと云い訳けしているが、とにかく、気持ちが安らぐから仕方ない。今年の正月に読んだ小林正観という方の本に、毎日トイレ掃除をしてふたをしておくと、数ヶ月後に思わぬお金が入ると、実例を挙げて書かれていた。これは欲をだして、儲かるように念じて掃除しても、効果があるそうだ。思わぬ大金は転がり込まなかったが、何とか今日までごはんを食べてこられたのも、この趣味のおかげと思うようにした。これは寝たきりになるまで、続けます。