| 大刀洗町 柳 純二
介護保険事業への積極的な協力という日医の大方針の基,我々末端の医師会も数年前よりいろんな活動を行ってきました.それらの活動は医師会員にとってはかなりの時間と労力を要するものであり,各会員の十分な理解と協力が無ければとうてい実現不可能なものであります.幸い我々の医師会においては,その点においてこれまで比較的良い活動が出来てきたと思います.以下それらについてご紹介し,またその中で見えてきた問題点等について述べます.
当医師会におきましては一昨年から介護保険委員会を立ち上げ,同委員会を中心に一昨年の夏からケアマネージャー試験に対する勉強会を企画,実行致しました.この勉強会が,一般の医師会員が介護保険の内容に触れるきっかけであったかと思います.また同委員会により主治医意見書の書き方の研修会も行いました.これらの勉強会や研修会を重ねる中で,介護保険制度に対して我々医師が持つべき認識,心構えなども習得してきたように思います.ただ残念ながらこれらの会に殆ど出席せず,今になってトラブルを起こし始めている方がおられることも事実です.これについては今後も引き続き指導していく必要性を感じております.
昨年の夏には,秋から始まる認定審査会の委員の研修会を開始しました.公正で的確な認定審査を行うことは,言うまでも無く介護保険制度における最も重要な部分の一つであり,各委員はこの点についての認識が不可欠です.研修会においてはこの認識の習得も含めて,審査に必要な知識の確認を行ってきたつもりです.幸い大方の会員の方々にはご理解を頂き,現在まで医師会主導で大過なく審査会を行ってくることが出来たと思って
います. また医師会員の中には,市町の介護保険事業作成委員会の委員として制度の実際の計画などに関わった方もいます.この会は住民のいろんな団体の代表の方により構成されたものですが,一般住民の委員の中には介護保険に対する基礎知識が無い方が多すぎて十分な議論ができず,結局は市町の担当者の報告会に終わってしまった感があります.私自身も作成委員でしたが,県医師会からの各種の情報などを基に委員会で何か提案をしても,それをなかなか理解して頂けなかった経験があります.一般住民の委員自体の介護保険事業に対する意識の高揚も必要ですが,実施主体である市町のより強いリーダーシップと,各委員に村す
る積極的な指導の必要性も感じた次第です. そして昨年の10月より認定審査会が始まり,主治医意見書の作成も始まりました.主治医意見書の作成については当医師会では研修会を行っていたこともあり大きな混乱もなく滑り出しました.
但し中には痴呆の状況や身体所見の記述が不完全で審査し難いケースもありその都度指導を行ったこともあります.認定審査会については,小郡市と三井郡では別の保険者になるため医師会が完全に分断された形になっています.保険者が枠組みを作るため止むを得ないことではありますが,医師会としては何かにつけてやり難い状況におかれています.特に我々の医師会の場合,小郡市では
二次判定ソフトを組み込んだパソコンを利用した審査を行い,三井郡では一般的な審査を行っており両者にかなりの差が見られます.従って審査会における問題解決などもそれぞれで独立して行われねばならず,医師会としての統一性がとり難いという弊害が出ています.ただ担当理事としてはこれらの両方を見て比較することが出来るため,
それぞれの長所,短所を理解し易いというメリッ トもあります. 小郡市の場合は,パソコンを利用しているだけでなく,合議体間の連絡を密にし独自の工夫を数多く行っており,認定の公平性という点ではかなり高いレベルにあるように思います.客観的に見ると保険者の大ささとしてはこの位(人口約5万人)が一番まとまりが良くいろんな独創性も出せるようです.ただその独創性の故に,今後は回りの保険者との公平性の問題が出てくることを若干危惧しています.しかし他の各保険者が一度は参考にされるべき内容を持っている保険者だと思い
ます. 三井郡の場合は近隣の浮羽郡と共に広域連合の浮羽三井支部という枠組みの中で認定などの実務を行っております.浮羽三井支部の上には広域連合という巨大な組織があり,小郡市と比べると20倍以上の大きな保険者であります.保険料の低廉化,コストダウンなどのマスメリットの一方で,当然ながら一つ一つの細かな対応がしづらいというデメリットも確かにあります.組織が大きすぎるために,何か新しいことを決めようというと
に,迅速な対応が困難なようです.何か意見や希望を言っても,なかなか結論が出ません.広域連合の幹部の所まで現場の生の声が届いているのか疑問に思うことも度々あります.今後はいかに風通しの良い組織作りを行うかが広域連合の大さな課題ではないでしょうか.
今年の3月に入りケアプラン作成が始まりかけた頃,地域の指定居宅介護支援事業者の方々との会合を医師会で行いました.医師会員の中には,それまで行ってきた訪問看護やデイケアなどの在宅サービスがケアプランに盛り込まれるかどうかに不安を持つ方が多かったため,その点の確認を目的として行ったものです.会合では医療情報の提供を積極的に医療機関に依頼して欲しいこと,
これまで医療機関が行ってきた在宅サービスをケアプランに盛り込んで欲しいこと,医師会側も全面的に協力していくことなどを伝え,好意的な雰 囲気の中に会を終了しました.7月には第2回目の会合を行い,さらにお互いの理解を深めてまいりました.次回からは指定居宅介護支援事業者の中から数人に世話人になって頂き,会を運営していく方針としております.介護保険事業の推進において,医療,福祉,保健の連携が重要であるこ
とはよく言われますが,黙っていても誰も活動を始めません.本来なら保険者が音頭を取って行うべきこととも思いますが,その動きもありません. 福祉,保健の方からは医療側に対してかなりの遠慮がありますので,現実的には医療側から活動を
始めるしかないように感じています.現在我々は,居宅介護支援事業者だけを呼んでいますが,今後は保険者である市町や居宅介護サービス事業者にも声をかけてこの会を育てていこうと思っており
ます. そして今年4月より,いよいよ介護保険制度が開始致しました.3月まではいろんな準備に追われ忙しい毎日でしたが,それに引き換え4月から は比較的平穏で特に大きな混乱も無く始まった感があります.しかし1ケ月,2ケ月と過ぎるに従っ
て利用者や家族からの不満の声が少しずつ開かれるようになってきました.介護保険制度が利用者の負担を強いる制度であるということが,4月になってやっと実感として判り始めたためと思われます.「こんなにお金がかかるとは思わなかっ
た.」,「介護保険制度とはもっと良い制度と思っていた.」などと自分から発言する人もいれば, こちらから問い掛けて始めて「実はお金が掛かり過ぎて因っている.」と言う人もいます.中には
サービス事業者に対して,サービスの内容に対してはっきりと不平を言い出した人もいます.これまでは自己負担なしであったため多少の不満があっても我慢していた利用者が,自己負担の発生と共に不満が噴出してきたということでしょう.今年の秋から保険料徴収が開始されますと,この傾向はさらに顕著になるのではないでしょうか.情報公開のこの時代に,利用者が自己負担に見合
うサービスを受けているかどうかを確認しようとするのは至極当然のことです.今後,保険者もサービス事業者もケアマネージャーも認定審査会も,利用者からの厳しいチェックを受けることになるでしょう.利用者がお金を払っても納得できるような介護保険事業の内容にしなければなりませんが,これまでいろんな形で関わってきた立場で改めて現状を見てみますと,厳しいチェックに耐えられないところが方々にあるように思われます.
介護保険の真価が問われるのはまさににこれからです.膨大な費用とマンパワーを費やして行われている一大プロジェクトですが,我が国にとっ て全く新しい制度ですから予定通りにいかないのは当然でしょう.大事なことは,予定外の事態が生じたときに出来るだけ早急に改善するのを厭わないことだと思います.利用者にとっては一日たりとて介護を休むことはできません.問題点の改善に何年も掛かっていたのでは利用者はたまったものではありません.まず利用者ありきという原点に立ち返って,介護保険に関わる全ての人が,利用者の声を開きながら積極的に問題点の把握を行い,逐次改善の努力を行っていくことが何より必要ではないでしょうか.
|