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白石 恒明 (小郡三井)
平成20年4月から始まる特定健診・保健指導を厚労省担当官の講演を参考に考えてみたいと思います.
特定健診・保健指導をテーマに厚労省担当官が講演(市町村に対して国保新聞より)
医療制度改革の目的
今回の改正は医療保険改革ではなく,医療構造改革である.医療保険だけの改正だけではもうもたないという認識のもとで様々な改革を実施する.
医療費の3分の1は生活習慣病関連
国民医療費は現在32兆円(16年度の国民医療費は32兆1,111億円).32兆円の中身を分析してみると,その3分の1,10兆円を超す医療費が生活習慣病だった.健康日本21で119の病名分類がある.
そのうちの20弱の病名が予防可能な病名だ.ここを治せばいいのではないだろうか.死亡原因の6割が生活習慣病だということが分った.健康寿命を延伸するためには予防ということを考えないといけない.これからは若い世代から見直そうという予防対策が重要になる.これを具現化するのが特定健診・保健指導だ.また内臓脂肪肥満に着目した「内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)」の概念を導入する.具体的な取り組みとして健診・保健指導の重点化・効率化などの観点から,医療保険者に健診・保健指導の実施を義務づけた.糖尿病等の有病者・予備群を減少させ,中長期的な医療費の適正化を図ることが目的だ.75歳以上の人の多くは医療機関にかかっている.なぜ医療機関にかかっている人に対し健診を実施しないといけないのだろうか.今回はこのようなことも踏まえ,75歳以上の人は健診義務化の対象から外し,後期高齢者医療制度での努力規定とする方向になっている.
健珍データ レセプトと同じ流れに
23年度からレセプトがオンライン化される.厚労省はずっと提唱してきたが,今回,ようやく実施することになった.レセプトがIT化されれば,きっちりとした医療費分析ができる.保健師がレセプトを見ると事務方で見えないものがたくさん見えてくる.健診データだけでは何もできないが,レセプトデータを持っていればできる.健診データとレセプトを突合することによって,さらに効果のある保健指導ができるのではないか.例えば現在,長野県の保健師は国保と併任辞令をかけている.だから衛生の保健師もレセプトが見ることができる.しかし(国保と併任をかけていない)衛生の保健師はレセプトを見ることができない.国保のデータだからだ.他方,国保保健師は一般衛生で実施している健診のデータは見られない.
だから,今回一緒にして両方が見られる立場にしようとした.一緒になればレセプトを踏まえた保健指導ができる.レセプトが見られる保健師さんは,高血圧のレセプトが出てきた瞬間に保健指導に走る.最初の高血圧のレセプトを見て食生活なりを指導ができる体制が整う.
特定健診等の実施で保険料引き上げ必要
今回の改正では老健制度を廃止して後期高齢者医療制度を創ることが盛り込まれた.老健事業の住民健診では900億円というお金を使っていた.
20年度からはそのお金の一部が市町村にいかなくなる.現行のいわゆる「3分の1ルール」は,市町村,都道府県,国がそれぞれ3分の1を負担するというもので.そのほとんどが健診費用に使われていた.20年度からは都道府県から3分の1,国から3分の1が市町村国保に補助されることになる.では,「あとの3分の1」はどうなるのか.今まで通り3分の1を一般財源から繰り入れれば良いのではないかと言う方もいるかもしれないが,本来は保険料財源にしないといけない.一般財源とは全ての住民から徴収している住民税が財源.特定健診の費用に一般財源を繰り入れるとすれば,なぜ国保だけに充てるのかという話になる.そう考えると特定健診等の費用は保険料を財源にする必要があり,結果,その分,国保保険者は保険料を上げていかなければならない.一方,被用者保険に対しては予算措置としか書いていないため,健診費用の3分の1相当しか補助されない.被用者保険は健診費用の3分の2は保険料財頼で賄わなければならず,20年4月からは被用者保険も保険料を上げていかないといけない.
後期高齢者支援金の加算・減算
特定健診の実施率などを参酌し,25年度から後期高齢者支援金の加算・減算を実施する.ではどういう数値をもとに加算・減算を実施するのか.
1つ目の指標が特定健診の受診率(または結果把握率).衛生部門の方は何%できると思っているだろうか.国保の40〜74歳が対象だが50%いくだろうか.なかなか厳しいのではないだろうか.国保台帳から調べて特定健診に来てください,と声をかけただけで本当に皆,来てくれるだろうか.色んな被保険者の実態を把握して,どういう職業なのか,どういう状態なのかを調べてはしい.今までの5月健診では絶対に健診できないという職業の人もいるかもしれない.そういう人のためには時期をずらさないといけない.2つ目の指標が保健指導の実施率.3つ目の指標が目標設定時と
比べた内臓脂肪症候群の該当者・予備群の減少率である.
この3つをもって後期高齢者医療支援金を加算・減算する.国保は有病者・予備群が多い.有病者については,検討会の委員から加算・減算の算定式の分母・分子から外せという意見がある.有病者を改善させるのは難しいことも考慮に入れ,常に投薬治療等々を受けている人を分母・分子から外すことになると思われている.さらに退職してきたグループの状況も考え,異動したばかりの者は分子・分母から外すことにする.
3指標の重み付けを検討 メタボ減少が最も重要
保健指導を一生懸命実施しても改善しなければ同じこと.保健指導を実施すること自体が重要ではない.有病者・予備群を抑えることが今回の改正の目標だ.例えば,ポピュレーションアプローチによって保健指導はあまり実施していなくても,内臓脂肪症候群の該当者・予備群が25%減少する場合もあるかもしれない.そう考えると3つの指標はあるが,それぞれ33%ずつのウェイトで良いのかということになる.健診実施率は上げてほしい.しっかりとしたレセプトを使って,トータルとしての保健指導を実施するためだ.まず国保保険者は健診率を上げていくことを,政策目標として一番にしてもらいたい.
この講演の内容を理解すると,住民健診事業を一般財源から医療保険事業に移行する.これにより,一般財源は抑制できる.医療保険事業は大幅に増加するが,それは保険料を増額すればいい.これにより医療費が減少するかどうかはわからないが,すくなくとも医療保険額は増加したのだから,医療改正では医療費を減額する.しかし,医療機関にとっては特定健診・保健指導という利益をあげられる事業を作ってあげたのだからそちらでがんばりなさい.と言っているようです.
現在まで市町村は住民健診・保健指導をすればするはど,一般財源が減少するので,あまり積極的に行ってきませんでした.住民健診費用は対象年齢の20%程度が受診する前提で予算を組んでいますので,60%の人々が住民健診を受けると大赤字になってしまいます.しかし,今回から後期高齢者支援金の加算・減算がありますので極めて積極的に行われるでしょう.医療機関はどうでしょうか?健診部門を持っているような中小病院は積極的に参加するでしょう.しかし,一般的な内科の医院は健診業務はできるでしょうが,保健指導は参加することが困難だと思われます.この特定健診・保健指導事業にどのようにかかわるのか難しい選択を強いられるようです.
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