一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

聖和記念病院  田中幸一

  • 経鼻内視鏡(鼻からの胃カメラについて)
  • 投稿者:聖和記念病院  田中幸一

はじめに

みなさんは、鼻から内視鏡を挿入する検査法をご存じでしょうか?これまで、胃カメラは口から挿入するものが一般的でした。しかし、最近では外径が約6mmの細い内視鏡が開発され、鼻から挿入する胃カメラが行われることも増えています。
メリットは?
① 経鼻内視鏡では、内視鏡が舌根と呼ばれる舌の付け根に触れないため「オエッ」とする嘔吐(咽頭)反射が起こりにくいので、従来からの口からの胃カメラ(経口法)に比べて楽です。また、鼻から入れるためスコープが細くなっており、のどを通る時につまる感じはほとんどありません。
② 経口法では見ることのできない鼻腔や上咽頭の観察が可能です。
③ 検査中に会話することができますので、わからないことなどをその場で尋ねたり、気分を伝えることも可能ですので安心して胃カメラを受けることができます。
④ 鼻からの内視鏡は精神的にも楽であるうえ、検査中の血圧や脈拍の変動が少ないので、身体的にも優しい検査といえるでしょう。
⑤ 検査終了後の咽頭違和感が少なく、30~60分で飲水や食事をすることができます。(口からの場合は1~2時間は食事ができません。)
デメリットは?
① 鼻腔が極端に狭い人(若い女性に多く30人に1人程度といわれています)、鼻の手術をされた人、肝硬変などで出血傾向のある人、重症(急性期)の花粉症やアレルギー性鼻炎(前処置で腫れがひくのでほとんど可能ですが)の人、抗凝固療法を行っている人は、鼻からの内視鏡が不可能であったり、避けた方がよい場合があります。
② 消化管出血等の緊急時の止血処置やポリープ、早期がん等の内視鏡的治療はできません。
③ 検査時間が経口法より若干長くなります。
合併症は?
鼻からの胃カメラによる合併症としては、鼻痛と鼻出血があります。約10%の方が軽度の痛みを感じられるようです。検査のはじめに鼻が痛いときは、中断して鼻の麻酔をもう一度やり直します。鼻出血は約3.3%とされていますが軽度のことがほとんどです。
実際の検査の方法は?
① 胃の中の泡をとるシロップを飲みます。
② 鼻腔内を拡張させるためと、鼻出血を予防するための薬を噴霧します。
③ 鼻の痛みをとるための麻酔薬を噴霧します。
④ 内視鏡の口径より少し大きい麻酔薬を塗ったステックを鼻に留置し、鼻腔を拡張させます。
⑤ 後は、従来の口からの胃カメラと同じように観察します。
おわりに
現時点における経鼻内視鏡の適応としては、(1)スクリーニング、(2)確定診断後の経過観察、(3)開口障害、(4)食道・幽門狭窄、(5)内視鏡的胃ろう造設術、交換、(6)イレウス管挿入等があります。一方、精密検査や内視鏡的治療は経口内視鏡が適応になります。鼻からの胃カメラは、決して気持ちがよいというほどのものではありませんが、安全で身体的にも精神的にも優しい検査であることは間違いないと思います。
内視鏡に抵抗のある方、今までの口からの内視鏡で苦痛を感じたことがある方は鼻からの内視鏡を一度お考えください。がんは早期に発見・治療すれば、治る可能性も高くなります。より負担の少ない鼻からの内視鏡の登場によって、内視鏡検査がさらに身近なものになることが期待されます。

平成21年2月

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