一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 近視は治る!?
  • 投稿者:くわの眼科医院 院長 篠原 康之

 学校医を長年やらせていただいて最近感じることは、小学生の視力が悪くなる年齢が年々低下していることです。最近の学校保健統計(令和5年度)をみても、小学生のみならず中学生、高校生でも同じ傾向があるようです。裸眼視力が1.0未満の割合が小学生で約38%、中学生で約61%、高校生で約68%となっています。
 視力低下の原因のほとんどは近視と思われます。では近視って何?
 “近視”は聞いたことある人は多いと思います。実際に近視の人は「近くは見えるけど遠くは見えにくい」と答えるかもしれません。学生であれば「授業中黒板の字が見えにくい」といった自覚が出ますので、問題です。
 医学的にはほとんどの近視は眼軸(眼球の奥行きの長さ)が伸びる(伸びすぎる)ことで起きます。人間では生後成長とともに眼軸が伸びていき、小学生の頃は速く伸びるそうです。ちょうどいいところで止まってくれると視力が1.0以上の“いい視力”ですが、さらに伸びてしまうと近視になります。この“伸びすぎる”原因には遺伝因子と環境因子があり、最近は環境因子が注目されています。ゲーム機、パソコン、スマホなどICT機器の使用はもちろんですが、子供のアウトドア生活が減ってきていることも大いに影響していると考えられています。
 では、タイトルの“近視は治る!治らない?” 遺伝性の場合は残念ですが、一生にわたり進行すると考えられます。しかし、環境因子はなるべく取り除く努力が必要と思います。それにより多少とも進行を遅らせることは可能です。また、最近日本の点眼薬メーカーが近視の治療薬として認可された点眼薬を発売しました。5歳以上の子供さんで眼軸が伸びるのを抑制する、すなわち近視を進行させない効果が期待できる薬です。結論を言うと、ほとんどの近視は治せないけど、低年齢時には進行を抑制することは可能だといえます。
 最後に、学校検診で眼科受診を勧められた小学生の約44%は受診していないというデータもあります(全国保険医団体連合会「2020年学校健診後治療調査」)。早期発見で一部には治せる近視もありますので、特に小さなお子さんの場合は眼科受診をお勧めしたいと思います。

令和7年8月

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