一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 筋筋膜性疼痛症候群◆筋筋膜性疼痛症候群とは◆
  • 投稿者:赤松医院 院長 赤松 誠一郎

あまり耳慣れない病名だと思いますが、画像検査や血液検査などをしても異常所見が認められないのに、筋肉、筋膜及び周囲の軟部組織にうずく様な”痛み”や”凝り”を主症状とする疼痛疾患群をこのようによんでいます。
筋肉に過度の負担がかかり、筋の緊張をきたし、血流が障害され痛みが発生すると考えられています。

この筋痛の特徴は、筋肉内にしこり(硬結)があり、ここを触ると痛みに対し敏感な点、いわゆる”トリガーポイント”を有することです。(※図参照)
また、全身にわたる様々な部位の筋肉に、痛みや凝りを訴えるものを線維筋痛症と称するのに対し、1~2箇所の限られた少数の筋肉に、症状が認められるものとされています。

筋筋膜性疼痛は、骨格筋が存在する所であれば全身どこにでも起こりうるものですが、好発部位として、姿勢筋(背骨を支えて姿勢を保つ筋肉)に起こりやすいと言われ、後頭部、頸部、肩甲部、背部、腰部の痛みとして表現されます。
すなわち、一般的によく聞かれる”頭痛・肩こり・腰痛”という訴えの多くが、この筋膜症に起因していると言われています。

◆ 筋筋膜性疼痛疾患の代表的なもの ◆

この疾患の代表的な例としては、①筋緊張性頭痛 ②肩甲肋骨症候群 ③筋筋膜性腰痛
が挙げられます。

① 緊張性頭痛

この頭痛の要因は多岐にわたりますが、長時間の同一体位、眼精疲労のほか、精神的なストレスに起因することが非常に多いとされています。その痛みの特徴は、頭全体が締めつけられるような不快感のある鈍痛ですが、ひどくなると頭が過敏状態になり割れるような痛みを伴います。たいていの患者さんは、もっとも痛い部位を指摘することができ、そのほとんどは後頭部の”天柱”というツボの部位に集中しています(別名:天柱症候群)。そこは圧診すると痛みが放散する、いわゆるトリガーポイントになっています(※図参照)。

② 肩甲肋骨症候群

肩こりと同様、日常的によく見られる肩背部の筋膜性疼痛の一つに、肩甲肋骨症候群があります。
肩甲骨の上内角縁に圧痛点がみられ、ツボで言えばちょうど肩外兪に相当するところにトリガーポイントがあることより、肩外兪症候群とも呼ばれています。(※図参照)。中年になって胸部が丸くなった人や、背中を丸めて長時間机仕事などをしたときに発症することが多いと言われています。初期にはこのあたりの凝り、あるいは限局した痛みですが、進行すると後頸部、上肢あるいは肩甲骨の下方へ痛みが放散するようになります。この病因は、肩甲骨上内縁に付着する筋、すなわち筋肉の慢性攣縮による筋膜炎あるいは結合識炎であると言われています。

③ 筋筋膜性腰痛

いわゆる腰痛症と呼ばれるものの多くが含まれています。悪い姿勢、脚長差の違い、体幹の捻転などにより、脊柱起立筋、腰方形筋などに筋筋膜性疼痛が発生します。
他の筋筋膜症と同様に鈍い痛みを伴いますが、急激に激しい痛みを持って発症する場合もあります。このような場合、筋肉は痙攣したような状態になり運動も制限され、多くのケースで腰部脊柱の外縁にはっきりとした圧痛点が見られます(※図参照)。治療としてその圧痛点への局部注射を行いますが、患者さんはこの圧痛点に針が命中した場合強い痛みを感じるので、そこへ薬液を注入すると患者さんが「ひびきます」と言われ著効が期待できます。



◆ 予防 及び 治療 ◆

近年、生活様式の変化(運動不足やストレスなど)による筋肉の弱体化に伴い、この筋筋膜性疼痛症候群は増加の傾向にあると言われています。今回はその代表的なものを3例ほど挙げましたが、一般的な予防および治療法としては、適度な運動・ストレスの解消・マッサージ・薬物治療・鍼治療などがあります。しかし、症状が進行したものや慢性的なものに対しては、その部位への”トリガーポイント注射”が著効するケースが多く、当院でもよく用いる治療法のひとつです。慢性の痛みで困られている方は、一度この治療を受けられることをお勧めします。
なお、難治性のもの、あるいは症状が繰り返す場合は、その他のブロック注射などと組み合わせて治療するとより効果的です。
また、他疾患の2次的症状による筋筋膜性疼痛の場合、原因疾患の治療が優先される事は言うまでもありません。

※ トリガーポイント注射 …薬液はビタカイン等の局所麻酔薬で、少量のステロイド剤の添加が効果的


※兵頭正義先生の文献参照
平成19年10月

PAGE TOP