一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 再び「フクロー型体質」について
  • 投稿者:和漢堂福冨医院 院長 福冨 稔明

先日、ラジオの健康相談番組で、母親が子供の不登校の相談をしていました。朝起ができず学校へ行けないと相談があっていました。起立性調節障害であろうという答えでした。
文部科学省白書における平成22年度の不登校は、「小中学生が11万5千人(全生徒の1.1%)、高等生が5万3千人(全生徒の1.66%)」と報告されています。
起立性調節障害という視点でみると、不登校の約4割が起立性調節障害を伴い、また起立性調節障害の約半数に不登校を伴っている報告がされています。
起立性調節障害というのは、「自律神経系による心臓・血管の循環調節機構の不全による機能性身体疾患」であるといわれています。自律神経の調節がうまく行かず低血圧症状を主として、立ちくらみや・朝起ができない、疲れやすいなどの症状が出てくる状態のことを言っています。
漢方医学の立場から見た場合「フクロー型体質」の症状の一つとして起立性調節障害を生じることがあり、病気というより体質の問題であると考えています
そして、このフクロー型体質にたいして漢方では非常に有効な体質改善の薬物があります。例えば、苓桂朮甘湯といわれる処方があり、茯苓(きのこ)・桂枝(シナモン)・朮(オケラという花の茎)・甘草の四つが配合されています。

「フクロー型体質」

早い人は小学校5・6年生から遅くとも17.8歳の思春期頃にふくろう型体質を現してくる人が最も多いようです。昔は17.8歳の頃が最も多かったのですが、最近は小学校時代にこの体質を現してくる子供が多くなっている印象です。
西洋医学的診断では、起立性調節障害・慢性疲労症候群・不眠症・身体表現性障害・うつ病・神経症・不登校などの診断を受けている人が多いようです。
フクロー型体質の特徴を上げておきます。参考にしてください。

●子供の不登校
 不登校を問題として受診する子供の訴えは、頭痛・腹痛・全身倦怠感・午前中の抑うつ気分・無気力や食欲低下・睡眠障害(不眠、夜更かし、朝が起きづらいなどの生活の乱れ)・立ちくらみなど多彩であるが、夜には元気になりゲームや好きなことはできるといった特徴的な状態を示すことが多い。朝起きにくい。起きても頭がすっきりしない。体がだるい。朝は食欲がない。学校の授業も頭がボーとしているから能率が悪い。事務員など午前中はよくミスを起こしてこまる。午後三時ごろになると、大抵体の調子がよくなる。
弱虫である。年中いろいろと身体の苦情が絶えない。体がしんどい、疲れ易い、体力がない、頭が痛む、肩が凝る、胃が痞える、吐き気がある、胃が痛む、めまいがする、手足が冷える、朝起きにくい、夜が眠れない、不定愁訴といわれ、非常に訴えが多い。

●めまい・立ちくらみ

多く訴えられる症状の一つにめまいがある。急に立ち上がるとき眼の前が急に暗くなる。立っているときや歩行中にクラッとなることもある。同時に耳が聞こえなくなる。耳鳴りを感じることもあり、気が遠くなる。ひどい時には意識もなくなり失神する。これは即ち脳貧血であって、脳の血行がわるくなるためである。急に脳に血を送るため心悸亢進をおこしてドキドキする。又皮膚の血管を収縮させて血圧をあげるため、皮膚ことに顔色が蒼白になる。頭部顔面から大粒の冷や汗がでる。また、物がゆれて見えたりすることがある。運転中に物がゆがんだり、道路が盛り上がって見えたりすると訴えた者もいる。
悪くなる条件の一つに温度がある。あつい風呂、長湯、暖房の効きすぎなどは皮膚血管を拡張させるために悪いのではなかろうかと考えている。

●頭痛と肩こり

フクロー型体質には特有の頭痛と肩こりがある。その特徴は、横になると楽になることである。頭痛、頭重は主として後頭部が中心で、肩こりは項部が特によく凝るという。痛みは、鈍痛、重い感じである。同時に重い者はシビレ感を自覚することがあり後頭部が主であるが、頚から肩や腕にかけてシビレ感を訴えることもある。凝りは、他覚的より自覚的な凝りが強く、首を廻そうと思っても廻りにくい。按摩なども少しも良くならない。
尚、これと別に片頭痛持ちの者が多い。これは発作的にくる。女性は生理と発作に関係のある者が多い。多くは鎮痛剤を常用している人が多い。

●睡眠障害

「朝寝の宵っ張り」で、朝は起きられず夜はなかなか眠れない。学校や仕事に遅れそうになるので、親は何度も起こしにくる。ひどい者は目覚まし時計を自分でとめて、また眠る。朝はいつまでもベットにいたい。休みの日は昼近くまで寝ている。

●体の調子の日内変動

朝起きても、体も頭もエンジンかかからず、頭はぼーとして、体は動かすのも大義である。
だんだんによくなり午後3時を過ぎるころから元気が出てくる。日が落ちる頃から夜にかけては、一日中で最も元気である。何を食べても美味しく、またよく食べられる。

このような症状で悩んでいる方は、かかりつけ医に相談してみてはどうでしょうか。

 平成24年11月

 

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