一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 冷え性について
  • 投稿者:和漢堂 福冨医院 院長 福冨 稔明

毎日漢方の診療をしていると、「冷え症」の悩みを持っている人は非常に多いものです。ことに婦人はその60~70%に「冷え症」があるといわれています。最近は若い女性に多くなってきたように感じています。自分の悩みが身体の冷えから起きていると思っている人は少ないものです。こちらからいろいろ話を聞いて、漢方的診断をして初めて冷えが原因であることが解かる場合が多いものです。

「冷え症」という観かたが西洋医学にはありません。また「冷え症」の診断がついても、西洋医学の薬物には適切なものがありません。漢方は身体の冷えを捉える眼と、身体の冷えを治せる方剤が用意されています。

冷え症の原因
冷え症が起きる原因には、一つは冷え易い体質を持った人であり、もう一つは生活環境に原因がある場合であります。

1)体質による
冷え易い体質は漢方的には三つあります。

その一つは、平素から元気が乏しく、疲れ易く胃腸が弱い人です。そういう人は、食欲も少なく、少し食べ過ぎると消化不良を起こし、栄養が充分にとれないものです。新陳代謝が低く、体温も低いことが多く、寒さに弱く少し寒い目に遇うと、手足が冷え、腹痛、嘔吐、下痢などを起こしてきます。

二つ目は、水肥りの人も冷え易いものです。水分代謝が悪く、身体に水分が停滞すれば、水は冷え易く、又血管を圧迫して血流をさまたげます。従って冷えて、冷たく感じます。甘い物を食べ過ぎると身体が冷え易く、身体に水分がたまりやすくなります。体に水分がたまりすぎると疲れ易く、体が重くて動作がにぶくなり、動くのが面倒くさくなります。

胃腸に水分の停滞と冷えがあると、胃のあたりが冷たく感じ、口の中に呑み込めないような唾液がわいてくることもあります。大便が軟らかく下痢し易く、腹痛を起こすことが多くなります。

胸部に水滞があって冷えると、水鼻が出てクシャミが多く、ゼロゼロと喘鳴がある。背中が寒い、背中がゾクゾクすることもあります。

皮膚や皮下に水分が停滞すると、手足がむくみ易く、水が毛細血管を圧迫するため血行が悪く、顔は蒼白で皮膚が冷たい。神経が圧迫されるとシビレや痛だるい感じが起こります。

筋肉に水滞があるときは、その特徴は重だるいことです。体が重く感じられ、従って動くのが大義になります。立ったり座ったり歩き始めなど、筋肉の動かし始めは痛みを伴うことがあります。その痛みは、動かしているといつの間になくなり動き易くなるのが特徴です。階段を昇るときなど重い靴をはいている様だと訴えるひともあります。またこむら返りなど筋肉の痙攣や、体の筋肉がピクピクと動く症状も起き易くなります。

身体に水分が停滞して起きる大きな特徴は、天気が悪くなると症状が悪化し、汗をかくと楽になることです。

最後に三つ目は、漢方独特のものですが、お血型(古血)の冷え症があります。下肢や腰が冷えて、顔は反対にのぼせて、熱く感じる。冷えのぼせと言われるものです。血の流れに問題があると考えられています。

2)外部環境によるもの
外部からの冷えによって身体が冷えるものです。これには二通りあります 。

一つは冷たい物を取りすぎて胃腸を冷やすことによります。そうすると腹痛や下痢が起こります。一番多いのは冷蔵庫でギンギン冷やしたものを取ることです。
もう一つは、冷房などで外部から身体の表面を冷やすと、神経痛のような痛みや、シビレ、頭痛、腰痛などがおこります。
下肢を冷やすと、下肢の冷えた血液がお腹の中にもどって、お腹を冷やします。そうするとお腹の冷えによる、腹痛、下痢などが起きてきます。

冷え易い体質を持った人は、外部からの少しの冷えでも「冷え症」の症状を起こし易いものです。


平成19年2月

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