一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

ときえだクリニック 院長 時枝 啓子

  • 子どもさんが気管支喘息と言われたら
  • 投稿者:ときえだクリニック 院長 時枝 啓子

気管支喘息の患者さんは世界的に激増していて、日本でも将来的には人口の4割近くにまで到達するだろうと予想されています。排気ガス他による大気汚染や親世代の喫煙(特に母親)などが、増加に一役買っているようです。確かに、私が小学生の頃は珍しかったのに、今では小学校では10人に1人以上いる計算だそうで、増えてきたなあと実感します。 ゼーゼーと胸がなっていれば気管支喘息と診断するのも容易なのですが、
 1.風邪を引くと咳が長引く(増減を繰り返しながらも2週間以上続く)
 2.乾いた咳が止まらない
 3.しょっちゅう咳払いする、走ると咳が出る
などの、「喘息っぽくない」症状も気管支喘息の存在を疑わせます。

 小児の気管支喘息の診断は、特別な検査をしなくても主に症状で付けられます。小児期の気管支喘息は、2歳までに80%以上が症状が始まります(発症)。1回だけで診断が付けにくくても、その症状を繰り返すというのが特徴ですので、「ただの風邪」のはずが、咳だけしつこく出ては止まり、また風邪を引いて咳が続く、という病歴があれば、気管支喘息なのではないかと疑います。その咳が夕方から就寝前、夜間、明け方に多いようならさらに疑いは濃くなります。

 気管支喘息は「気管支のアレルギー性の慢性炎症」です。気管支とは、気管の先にあり、左右の肺に入ってどんどん2つに枝分かれしていく空気の通路です。通路ですから、当然水道管のように内腔が広く開いているべきものですが、アレルギー反応により炎症細胞その他が集まってきて気管支の壁を厚くして「気道の慢性炎症」状態になりますと、内腔が狭くなって空気が通りづらくなります。気管支のつきあたりには肺胞という小さな空気の袋がぶどうの房のように付いており、そこで酸素と二酸化炭素の交換を瞬時にしています。外界と肺胞の間を、スムースに空気が通るべきなのに、気管支喘息ではそのスピードが特に息を吐くときに落ちます。

 気管支の内腔が腫れて、そこから痰という分泌物が出てきて、気管支の外を取り巻く気管支平滑筋がぎゅっと縮みますと、いわゆる発作状態になり、咳が出て呼吸が苦しくなります。このとき聴診すると、気管支が細くなっているときはピーとかヒューとか高い音、少し細くなっているときはブーという低い音が聞こえます。呼吸音そのものが聞こえにくくなっているときは、窒息に近い状態ですので危険です。発作を起こして なくても、気管支喘息では、吸う息よりも吐く息の方がかなり弱く聞こえます。別に深呼吸をしてもらわなくても重症度はある程度分かります。

 気管支喘息の治療では予防が重要です。発作を鎮めるだけで終わってよいのは、ごく一部のめったに発作が起こらない子だけです。軽い発作でも度重なれば気管支の慢性炎症が進んできますから、こじれないうちに予防を開始することをお勧めします。発症から2年以内に予防を開始すると、その後の治りが良いと言われています。

 予防方法にはいろいろありますが、ほぼ100%の子に有効なのは抗アレルギー剤の吸入です。しかし、これだけでは慢性炎症を抑えづらい子が少なくありません。その場合は、抗炎症作用が強力な、吸入ステロイド剤を加えます。個人差がありますが、その子にあった必要最低限の量を維持量で使用していけば、必ず発作がコントロールできるようになります。内服のステロイド剤とは違いごく微量ですから、用法を間違えない限り副作用の心配はほとんどありません。吸入器も全くいりません。
しょっちゅう咳をしている子は健康ではありません。健康人は1日1回も咳をしません。お子さんが気管支喘息と診断されたら、そしてそれがごく軽いタイプでなければ、早めの予防開始をお勧めします。

 すべての気管支喘息患者さんへ:管理が不十分なときに、飛行機に乗る・ダイビングをするなどの気圧の変動は危険です。不幸な事態を招くこともあります。必ずかかりつけの医師に相談して下さい。

平成18年7月

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