一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

丸山病院 仲敷 健一

  • 浮腫(むくみ)について
  • 投稿者:丸山病院 仲敷 健一

浮腫(むくみ)とは、細胞外液のうち間質液が病的に増加した状態のことです。年齢を重ねてくると、浮腫(むくみ)が出てきたことがある方も少なくないと思います。浮腫はその場所(全身性の浮腫なか局所性の浮腫なのか)によって、その原因・疾患が異なってきますので、表1に浮腫の分類およびその代表的な疾患について示します。

 (表1)浮腫(むくみ)の分類
 1.全身性浮腫
a. 心性: 心不全
b. 肝性: 肝硬変症、門脈圧亢進症
c. 腎性: ネフローゼ症候群、腎不全など
d. 妊娠性: 正常妊娠、妊娠高血圧症候群
e. 内分泌性: 甲状腺機能低下症(粘液水腫)、甲状腺機能亢進症(前脛骨性粘液水腫)、ushing症候群、二次性アルドステロン症など
f. 栄養障害性: カロリー摂取不足
g. 薬剤性: 解熱鎮痛剤(NSAIDs)、降圧剤(Ca拮抗薬・βブロッカー)、副腎皮質ステロイド、経口避妊薬など
h. 特発性浮腫

 

 2,局所性浮腫
a. 静脈性: 上大静脈症候群、深部静脈血栓症、下肢静脈瘤など
b. リンパ管性: リンパ管閉塞(癌性・術後など)、特発性リンパ浮腫など
c. 炎症性: 火傷、日焼けなど
d. 外傷性: 打撲、ねんざなど

以上のように浮腫(むくみ)の原因は、多岐にわたるため、細かな診察や種々の検査を行っても、最終的な診断にたどり着けないことも臨床の現場ではありますが、一般的なその診断・検査方法について簡単に述べてみたいと思います。

 

浮腫の診断・検査の代表的な方
 表1の分類に照らし合わせながら、羅列してみます。まず、全身性の浮腫の場合についてです。
a. 心性: 主に心エコー検査で心不全(右心不全)の有無がないかcheckします。
b. 肝性: 採血検査での異常所見に加え、腹部エコー検査やCT検査を行います。腹水がみられることも多いようです。
c. 腎性: 採血検査に加え、尿蛋白の有無を尿検査で行います。
d. 妊娠性: この場合は女性で妊娠されている方に限局されます。妊娠中に血圧が高くなる場合に多いため、そのときには産科の先生に相談された方がよいと思います。
e. 内分泌性: 採血で各種ホルモン検査を行い、異常値の有無を判定します。
f. 栄養障害性: 食事摂取量の低下に伴い、蛋白合成能が低下し、低アルブミン血症となる場合です。
g. 薬剤性: 表1に示すような薬剤の服用があると考慮します。
h. 特発性: 上記診断もはっきりとした原因がなく、浮腫がある場合の総称です。

 

次に局所性の浮腫の場合についてですが、
a. 静脈性: 腫瘍など局所的に閉塞機転が出現した場合や静脈内に血栓ができ、血栓による閉塞がおこる場合で、その末梢側の血流が鬱滞することが原因です。造影CT検査や超音波ドプラ検査でその血栓をとらえることが可能です。また、採血によるDダイマー値が高値となる場合には、静脈内に血栓が存在する場合が多く、その際に超音波ドプラ検査や造影CT検査を行って、その有無をみて診断してゆきます。
b. リンパ管性: リンパドレナージが障害されるため、水分保持成分の組織への残留とともに水分貯留が起こることが原因です。
c. 炎症性・d.外傷性: 診察所見や経過を聞くことで、診断がつくことが多いです。

 

次に浮腫の状態を触ってみることでも診断を推測することもできます。浮腫の原因ははじめに述べたように間質に貯留した液体ですが、その液体の流動性が高ければ、圧痕を残す浮腫(pitting edema)となりますが、流動性が低ければ、圧痕を残しません(non-pitting edema)。
圧痕を残さない浮腫(non-pitting edema)の代表例は、甲状腺機能低下症に伴う粘液浮腫やリンパ浮腫(初期を除く)、蜂窩織炎、血腫が挙げられます。
ほとんどの浮腫では、圧痕性浮腫(non-pitting edema)となります。その場合の鑑別ですが、それが上下肢であれば両側なのか?or片側なのか?を見ながら診断を考えてゆきます。圧痕を残す浮腫の場合、指で圧痕を作って、その圧痕が改善するまでの時間をみる方法もあります。
10秒間で約5mm押し続けて圧痕をつくった後、その圧痕の改善時間が40秒未満のfast edemaと0秒以上のslow edemaの2つに分類されています。
40秒未満に圧痕が解除されるfast edemaの場合、低アルブミン血症に代表される血漿膠質浸透圧の減少がその病態で、低栄養やネフローゼ症候群が挙げられます。また、fast edemaの外観の特徴として、皮膚がテカテカと光沢を帯びることも多いようです。ネフローゼ症候群の原因である膜性腎症の場合は、悪性腫瘍がバックグランドとなる病態もありますので、注意が必要です。
40秒以上かかるslow edemaは、細胞外液濾過状態による静水圧の上昇が病態で、心不全や腎不全が主な疾患です。

以上のように浮腫(むくみ)の診断を考えてゆき、 原因がわかれば、その原因に対して治療をすすめてゆきます。 ただ、その原因は多岐にわたりますので、もし浮腫(むくみ)に気づかれて、数日間~数週間続いているような場合には、かかりつけの病院や近くの医療機関に受診されて、先生に相談されることをお勧め致します。

平成24年9月

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