一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • アルコールの適量と弊害
  • 投稿者:丸山病院 永露 厳

梅雨が明けますとビールの美味い季節柄になります。酒は百薬の長と言います。
適度のアルコールは下手な薬より体に良いということです。ここで知っておいて欲しいのは、よくAさんは酒につよいとかBさんは弱い、飲めないといったことを耳にしますが、それには理由があるのです。

アルコールは主に胃や十二指腸・空腸にかけて吸収され主に肝臓で代謝されます。代謝されたアルコールはアセトアルデヒドとなりアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)により酢酸に酸化されます。
問題は、ご承知のかたも多いと思われますが、ALDHには1型と2型があり、この酵素には人種的な差があり欧米人や黒人は1型と2型の両方持っているのが大部分である一方、モンゴル系民族(日本人も含まれる)は2型欠損が約半数いること。欧米人とモンゴル系(日本人)が同じ量のアルコールを飲むと血中のアセトアルデヒド濃度が日本人(2型欠損)のほうが10倍以上高くなるため頭痛、顔面紅潮、動悸、吐き気などが見られ大量飲酒できません。欧米とりわけ米国では総人口比で日本の数倍近いアルコール依存症がいるのも人種の違いからです。

ところで、毎日飲む人の適量としましては、ビールなら大瓶1本日本酒は2合まで、ウイスキー150ml焼酎は80~120mlと言われています。これらはカロリーが約300~350kcalということです。また肝臓をいたわるためには1)魚、野菜、豆腐などを適度にとり、2)空腹で飲まない、3)休肝日を設ける、4)深夜まで飲まない、5)(ALDH欠損型の人に)無理に酒を勧めない、などです。
相当酒に強い人がいますが、ALDHの1,2型両方もっていると思われます。しかし強いとはいえ長期にわたり過剰飲酒を続けるとアルコール依存症になりいろんな弊害をもたらします。大酒家に限らず、γ―GTP、AST,ALTに異常がみられたら直ちに禁酒すべきです。

アルコール依存症による疾患としては肝臓(脂肪肝、肝炎、肝硬変)、脳・神経障害(ウェルニッケ・コルサコフ脳症等)、消化管(静脈瘤、潰瘍他)、膵臓(慢性膵炎)、栄養失調(ビタミンB1欠乏ほか)、糖尿病、造血器障害(貧血)、骨粗鬆症、心臓(心筋症、虚血性疾患)、大腿骨頭壊死、高脂血症、高血圧、慢性硬膜下血腫など多岐にわたります。

大酒家の虚血性心疾患の死亡リスクは5倍に増加し、脳出血も5倍脳梗塞は6倍にもなるというデータもあります。脳卒中後遺症でリハビリに励んでいる患者さんで、脳卒中になるまでは大酒家であった人が少なからずいるのもそれを裏付けています。アルコールと上手く付き合って行く術を知ることも大切な事です。

平成18年8月

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