一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 子宮頸がん検診は20代から受診しましょう
  • 投稿者:松隈産婦人科クリニック 院長 松隈 孝則

子宮がんには頚部がんと体部がんとがあります。子宮頚部がんの発生にはHPV(ヒトパピローマウィルス)感染が大きく関連していることがわかってきました。
HPVには約90種類の型がありますが、そのうちこれまでに16型、18型、またそれらの関連型に発がん性があることが確認されています。

ではHPV感染はどのようにしておこるのでしょうか。昔から、性交経験の無い女性では頚部がんの発生が極めて少ないことが知られていましたが、このHPV感染は性交により起こるために、言い換えれば、性交開始とともにHPVに曝露されるということになります。これらのことをふまえ、子宮頚部がん検診の開始年齢を他国と比較をしてみますと、欧米各国では18歳または初交年齢から開始されています。一方日本では、30歳以上が公的補助の対象となっているところがほとんどです。最近になり検診対象年齢の引き下げが議論され、25歳からまたは20歳から対象年齢とする自治体が少しずつ増えてきました。

では医療の現場での実状はいかがなものでしょうか。久留米大学産婦人科大田俊一郎講師の論文より転載の許可をいただきました内容を、ここに呈示いたします。

先ず、早期発見の重要性に関しては、
1:頚部の細胞診は精度が確立され、しかも簡便で、若い女性での実施は容易であること

2:異形成(前がん状態)や早期がんは、自覚症状に気づく前に、検診受診でしか発見できないことが大多数であること

3:早期に発見できれば、その後の確実な診断と対応により、妊孕(よう)性の温存が可能であること
次いで、大田講師は、最近の傾向を判断するために膨大な資料の分析により、1986年から1995年までの10年間と1996年から2005年までの10年間の比較検討を行われています。

4:最近10年間の20歳代での早期がん発見は、全年齢の早期がんの10%を占め、それ以前の10年間の6%に比較し、著しく増加している

5:一方、病状の進んだ進行がん(浸潤がん)の発見の割合についても、最近10年間は7%、それ以前の10年間の3%に比較し、著しく増加している

6:しかも20歳代で発見された進行がんは予後が不良である

《 まとめ 》
これらのことから、初交年齢からの検診受診が理想ではあるが、まず20歳になったら検診を受けること、あるいは結婚や妊娠などで婦人科を受診する機会があれば、子宮頚部がん検診を希望し自らすすんで医師に申し出ることから始めましょう。そして早期に発見することにより、将来の妊娠・出産に不利にならないような医療技術の進歩を、信じてください。小郡市はこの点にもじゅうぶん配慮がすすみ、20歳からの受診に公的補助が出るシステムができています。自分の健康は自分で護るためにも、20歳代から子宮頚部がん検診を自ら受けましょう。

平成19年5月

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