一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 白内障の手術時期について
  • 投稿者:はたせ眼科医院 院長 畑瀬 真智子

*まず、白内障とは?
目のなかのレンズ(水晶体)が、混濁してくる病気です。光が、角膜やレンズを通って、網膜に達するから、物が見えるわけです。レンズの周辺部が濁っても、あまり、見え方に影響はありませんが、中心部が濁ったり、レンズ全体の濁りが強くなると、かすんで見えたり、まぶしく感じるようになります。
原因として、外傷によるもの、併発性(糖尿病や、他の眼病に伴うもの)、先天性、老人性のものなどがありますが、ほとんどの場合、加齢による老人性白内障です
これは、髪が白くなるのと同様の老化現象ですから、程度の差こそあれ、高齢になれば、どなたにも、起こりうる現象です。

老人性白内障は、多くの場合周辺部から濁り始めますので、初期には、自覚症状はあまりありません。また、進行速度は、まちまちで、10年、20年も、生活に支障の無い人もいれば、2~3年で見えなくなる人もいます。
混濁したレンズを、透明化する薬は、今のところありませんので、濁りが進んで、視力が低下した場合は、手術により、混濁したレンズを摘出し、人工レンズを移植します。

*手術時期は?
白内障と診断された患者さんから、「いつ、手術を受けたらよいの」、「知り合いの人が手術を受けて、よく見えるようになったそうだけど、自分も手術を受ければよいのかしら。」 「手術は早い方が良いと聞いたけど、」などと、質問されます。
老人性白内障は、急には進みませんから、特別な場合を除いて、急いで手術をする必要はありません。現在 、手術方法の主流となっている超音波乳化吸引法は、あまり白内障が進行しすぎて、レンズが硬くなると、やりにくくなるので、早い方が良いという意見もあります。しかし、それは、早ければ早いほど良いという意味ではありません。
何の自覚症状もないのに、白内障があるからという理由だけで、手術を受ける必要はありません。
なぜなら、昔と比べて随分、安全になった白内障手術ですが、思わぬ合併症がおこり、術前より見えにくくなることも、 稀とはいえ、ありえるし、術後に屈折度(近視や遠視、乱視の程度)が変化して、術前に眼鏡無しで見えていた人が、術後は、眼鏡をかけないと見えなくなるということも、起こりえるからです。
それに、本来のレンズは、厚くなったり薄くなったりして、物の像のピントを、網膜に合わせる働き(調節という)がありますが、人工レンズには、この調節力が在りません。

では、いつ手術を受けたらよいかというと、一言で言えば、日常生活に不便を感じるようになったら、手術を受けることを考えたら良いのです。
視力を、一つの目安と考えれば、0.5から0.7くらいの頃でしょう。視力が、絶対的な基準ではないので、その人の職業、趣味、生活習慣により異なります。
細かい仕事をする人、夜間の運転をする人は、0.7以上の視力でも、早く、不便さを感じるようになるでしょう。また、糖尿病などのため、定期的な眼底検査を受ける必要のある人は、積極的に、手術を受けるのが良いと思います。
先に述べた、急いで手術をする必要のある、特別の場合とは、
1) レンズが脱臼や亜脱臼を起こしているとき
2) 白内障が進行して、レンズが膨化したり、破嚢して、緑内障やぶどう膜炎を起こす可能性があるとき
3) 片方の目だけ、極端に進行して視力が落ちたために、外斜視になる可能性があるときなどが、挙げられます。

さらにもう一つ考慮しなければならないのは、視力低下の原因が、白内障だけであるかという点です。他の目の病気、あるいは、屈折度の変化が、視力低下の主要な原因であるなら、白内障の手術を行っても、期待したほどの、自覚症状の改善が見られないかもしれません。

以上のことを踏まえて、主治医とよく相談して、自分の手術の必要性、視力改善の可能性について、よく理解し、納得した上で、手術を受けられるのが良いと思います。  

平成18年12月

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