一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 起立性調節障害(起立性低血圧)
  • 投稿者:権藤内科循環器科 院長 権藤 秀之

急に立つと目の前が暗くなることはありませんか。

起立性調節障害は、自律神経失調症のひとつで、寝ている状態から起き上がった時に血管の調節がうまくいかず、立ちくらみ等の症状が出るものをいいます。
正常な人では、起き上がると静脈内のセンサーに刺激が加わり、静脈系が収縮します。特に下半身の静脈が瞬時に収縮して、血液が下半身にたまってしまうのを防ぎ、からだの中を循環して心臓に戻っていく血液(静脈系)の量と、心臓から出ていく血液の量とをちょうど良いバランスに維持しているのです。ところが、こうした一連の仕組みがうまくいかないと、下半身に血液が溜まって頭へいく血液の量が少なくなります。すると立ちくらみが起きたり、立っている間に気分が悪くなって倒れたりします。これが起立性調節障害(起立性低血圧)です。

症状

起立性調節障害の症状としてはさまざまなものがありますが、主に次のような症状が表れます。
・ めまいや立ちくらみがする
・ 立っていると気分が悪くなり、倒れることもある(脳貧血)
・ 朝、起きられなくて午前中は調子が悪い
・ 少し動いただけで動悸・息切れがする
・ 顔色が悪い
・ 食欲がない
・ 頭痛や腹痛がある
・ 疲れやすく、だるい(すぐにゴロゴロする)
・ 乗り物酔いしやすい
・ 寝つきが悪い
・ いらだつ
これらのなかで、めまい・立ちくらみが一番多く見られる症状です。

診断

診断には問診と起立試験、一般検査を行いますが、特に問診が重要です。
[問診]
問診では、寝起きの時や午前中に体調不良とならないか、特に新学期に具合が悪くならないか、また、家族に同じような症状をもった人がいないか等をお尋ねします。
次に、起立性調節障害特有の症状(立ちくらみやめまいを起こしやすい、立っていると気分が悪くなりひどいときは倒れる、入浴時や嫌なことを聞いた時に気分が悪くなる、少し動くと動悸や息切れがするなど)があるかどうかも鑑別のためにお聞きします。
また顔色のほか、食欲、強い腹痛、乗り物酔いなどの有無も診断の重要なポイントです。
[起立試験]
10分間安静臥床後、血圧、脈拍数、心電図を記録し、引き続いて10分間起立した後、起立位で同様の記録を行ないます。試験結果は、起立性調節障害の診断をする際に問診に対する客観的データとなります。
安静時に比べて立っているときの脈圧の低下が著しい、収縮期血圧低下が目立つ、脈拍が1分間に21以上増えるなどの検査結果が出れば、起立性調節障害の可能性があります。また、このときに立ちくらみなどの症状が伴えば診断は確定的になります。
[その他の検査]
起立性調節障害の診断には、ほかに病気がないことをはっきりさせる鑑別診断が大切です。
貧血や心臓の病気、結核や慢性副鼻腔炎などの慢性感染症、あるいはてんかんの有無などについても調べます。
必要に応じて、血球数や炎症反応などを調べる血液生化学検査、尿検査、胸部X線検査などを行います。こういった一連の検査でほかの病気でないことを確認のうえ、最終的に起立性調節障害と診断して治療を開始します。

治療

軽症例では、非薬物療法から開始します。
具体的な日常生活の注意点
運動療法 散歩程度の歩行はしたほうが良いです。
起立性調節障害の子供の多くは運動が嫌いですが、横になりっぱなしならないようにします。また心拍数が120を越えない程度の軽い運動は毎日行います。
起立時には、いきなり立ち上がらずに、30秒程かけてゆっくり起立します。
また歩き始める時にも、頭位を前屈させれば、脳血流が低下しないので起立時の失神を予防できます。また起立中には、足踏みをしたり、両足をクロスに交叉すると血圧低下が防げます。めまいがしそうになったら、倒れる前にしゃがみ込むことも教えておきましょう。
早寝早起き、十分な睡眠をとる、食事は三度決められた時間に摂るなどの規則正しい生活リズムを心掛けるようにします。
気温の暑い場所は避けましょう。高温の場所では、末梢血管は動脈、静脈とも拡張し、また発汗によって脱水をおこし、血圧低下を来します。
食事の注意点 傾向としてこの病気の子どもは塩辛いものをあまり好みませんが、循環血漿量を増やすため、やや多めの食塩摂取は効果があります。
薬物療法
上記のような生活指導で改善が見られないときには、薬物療法を併用します。軽い昇圧薬・血管収縮薬(メトリジン;ミドドリン、リズミック;アメジニウム)などを内服することにより症状が改善されることも少なくありません。近くの内科または循環器科の先生にご相談ください。

平成20年10月

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