一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と糖尿病
  • 投稿者:新古賀リハビリテーション病院みらい  吉窪 誠司

重篤な肝障害へと移行する可能性がある脂肪肝で、アルコールが原因でないNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)やNASH(非アルコール性脂肪肝炎)といった病態が最近注目されるようになり、生活習慣病の関連も含めて注目されてるようになりました。

 

糖尿病との関係

日本糖尿病学会の糖尿病患者の癌による死因調査では、肝臓癌が1位となっています。一般的な癌死の上位は消化管癌であり、糖尿病患者の死因で肝臓癌が上位になる理由には、NASHを合併している方がかなり多いことが影響しています。

厚生労働省NASH研究班によって糖尿病で肝機能障害を有している場合、多量飲酒者は少ないことが判明しています。よって糖尿病患者では非アルコール性肝機能障害が多いと考えられます。また約5,000人の糖尿病患者を対象とした研究では、肝機能障害の割合は約3割で、そのうちB型C型肝炎・飲酒する方はほとんどいなかったことが明らかになっています。つまり、糖尿病患者で肝機能障害を持つ方のほとんどはウイルス性でもなく、アルコール性でもない、非アルコール性の脂肪肝であった可能性が高いと推測されます。その主な原因は、NASHやNAFLDではないかと考えられます。

 

糖尿病の患者は肝臓癌による死亡リスクが高い

約4,000人の糖尿病患者を対象に行った5年間の追跡調査で、糖尿病の患者では、5大癌(胃癌、大腸癌、肝臓癌、膵臓癌、肺癌)のうち、大腸癌、肝臓癌、膵臓癌の死亡リスクが一般の方に比べて明らかに高いとの結果です。そのうち肝臓癌の死亡リスクは3.6倍と、5大癌の中で最も上昇することが明らかになりました。ここから、肝炎ウイルス感染による肝障害を除外するために、B型肝炎表面抗原およびC型肝炎ウイルス抗体が陽性の患者を外してさらに分析、結果死亡リスクは2.5倍とやはり高いとのことです。

 

血小板数20万以下では肝臓癌による死亡リスクが6倍以上

患者の血小板数によって、死亡リスクを抽出することが可能です。糖尿病患者を血小板数が20万以下のグループと20万より高いグループに分類し死亡リスクを調べると、結果的に血小板数が20万以下のグループは、肝臓癌による死亡リスクが6.6倍になることが判明しました。この研究で調査を行った4,000人のうち、約40%が血小板数20万以下のグループに分類されました。つまり、糖尿病患者のうち約4割の方は、一般の方の6.6倍ほど肝臓癌による死亡リスクが高いということが判明し、定期的な腹部超音波検査や画像診断を行い、肝臓の状態を把握する必要があります。

一方、血小板数が20万よりも高い糖尿病患者のグループでは、肝臓癌の死亡リスクは一般の方とほとんど同じという結果が得られました。血小板数が20万よりも高い場合は肝臓の線維化が進行していないため、肝硬変をきたしている可能性が低いからだと考えられます。つまり、肝臓癌の死亡リスクがより高い糖尿病患者さんをスクリーニングするためには、血小板数が20万以下であるかどうかを見ることが重要です。

 

FIB-4 index2.67以上の場合は肝臓癌による死亡リスクが14倍になる

さらに、肝線維化のスコアリング:FIB-4 indexが2.67以上の糖尿病患者は、肝臓癌の死亡リスクが14倍にまで上昇することが明らかに。一般的にはFIB-4 indexが2.67を超えると、肝臓の線維化がかなり進行していると判断されます。

調査を行った患者のうち、FIB-4 indexが2.67を超える糖尿病患者さんは、全体の11%でした。FIB-4 indexを活用することで、早急に肝臓を検査するべき患者さんを全体の1割程度にまで絞り込むことができます。

 

関連遺伝子

脂肪肝と遺伝の関係はすでに報告がされており、その感受性遺伝子として、現在もっとも定説となりつつあるのは22番染色体の近傍にあるPNPLA3という遺伝子です。外国ではPNPLA3がもっとも脂肪肝に関連している遺伝子だと発表されており、日本人にもこの遺伝子が関係しているということが分かってきています。

また、Matteoni分類におけるタイプ3(線維化のないNASH)と通常の脂肪肝の方には健常な方と遺伝子的な差が見られない一方、タイプ4(線維化のあるNASH)の方には遺伝子的に差が出ることも判明しています。つまりPNPLA3は通常の脂肪肝の感受性遺伝子であると同時に、NASHの発症や肝臓の線維化、肝臓癌のリスク遺伝子でもあるということです。

 

NASH治療のメインは肥満改善

治療の第一には、やはり減量・運動による体重コントロールが重要です。また、薬物療法を行う場合、合併する生活習慣病をしっかりコントロールすることが必要です。効果が期待されているのはピオグリタゾン(アクトス)、ビタミンEなどの投与ですが、現状では特に有効というわけではなく、またNASHの治療薬として保険適用された薬剤もありません。

 

高脂血症と糖尿病薬併用でNASH病理組織像を改善

興和はこのほど、東京大学先端科学技術研究センターの田中十志也特任教授らと、高脂血症治療剤と糖尿病治療剤との併用療法でNASHの病理組織像を改善することを明らかにしたと発表しました。動物モデルを用いた解析で、腫瘍の発生を減らし、生存率を改善させる結果を得ています。研究の成果は肝癌の成因として増加しているNASHの新規治療法につながることが期待されます。さらにNASHの動物モデルを用いて、高脂血症治療剤「ペマフィブラート」と糖の排泄を促す糖尿病治療剤「トホグリフロジン」との併用療法を検討し、この検討では高血糖などに加え、NASHの病理組織像を改善していることが分かりました。さらに長期間投与では腫瘍の発生を抑制し、死亡率上昇を抑制することを突き止めています。

今回検討した併用療法はNASHだけでなく、過剰な糖と脂質によって引き起こされる糖尿病の合併祥など組織障害に対する治療戦略としても期待されるといいます。

 

以上、NASHに関してのトピックをピックアップしましたが今後更なる治療の進歩が待たれます。

 

参考)メディカルノート編集部 2020/10

参考)化学工業日報 2022/2/22配信

 

令和4年7月

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