一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

黒岩医院 院長 黒岩 達

  • 本当の時間、自分の時間
  • 投稿者:黒岩医院 院長 黒岩 達

“気になる、時計”
♪♪  背~高 ノッポの 古時計~、おじいちゃんの~ 時計 ・・・・・  ♪♪
懐かしいメロディーが少し今風になって、流行っています。
平井 堅が歌う、 ♯ 大きな古時計 ♯ です。
題名に”時計”の付く歌はいくつかありますが、いずれも、ふと口ずさんでいる、そんな経験をしたことがある、やさしい時の流れを実感する、そんなメロディーばかりのようです。

今より少し、ゆっくりとしていた頃には、家の中には、ちょっと大き目の掛け時計が1ヶと、数個の置時計、目覚し時計が、あるのが普通だったようです、そうして、それぞれの時計の刻む時は、すこしづつズレているのが、当たり前でした。

“時計だらけ”
とにかく、たくさんの時計がある、AV機器・エアコン・ストーブ・炊飯器・電子レンジ・パソコン・携帯電話・・・・どれにも、みんな時計が組み込まれている。
腕時計と懐中時計を除いて、家中の時計をカウントしてみたら、 21個。
まともに動いているものだけで、このありさま。
電池式のクォーツ時計が20個と、正確無比の電波時計(我が家の標準時)が1個、朝、目覚し時計で起床、洗面所で時間を確認、朝食を済ませ遅れないように出勤、診察室でも、処置室でも、時計に見張られている。
外出する時にも、玄関で時計が見送っている。
視野の片隅には常に時計が、の状態。

“時計の進歩”
遠い昔、日時計に始まり、水時計、砂時計、ろうそく時計、ランプ時計など、今から考えると、精度は問題にならぬくらい低い、かなりアバウトなものから、次第に機械式時計の時代となり、更に精度の向上が図られました。
重錘やぜんまいを動力源とした時計は改良を重ねられ、特に航海術の進歩に伴い、航海における船の位置決定のために
高精度の時計が求められマリーン・クロノメーターが作られ、これは一般の時計の精度を著しく向上させる結果となりました。
18世紀~19世紀初めには電気時計が生まれ、その後、音叉時計や電子式てんぷ時計などが作られた。
1927年には水晶時計(クォーツ時計)がアメリカで生まれ、時計の精度は飛躍的にアップ、
[1969年には世界初のアナログ式腕時計(クォーツ)が日本で発売]
さらに、1949年には原子時計がアメリカで生まれました。
[クォーツ時計の100倍以上の精度で時を刻み、1958年1月1日0時を起点として、現在も国際原子時が維持されて、通信、放送、航行などの分野で使用されている。セシウム原子時計]

このように、時計の発達は人間社会、科学技術(天文学、航海術、産業革命、など)の発達と深い関係を持っており、現在の超高精度の時計を持つに至った。

“電波時計”
本体はクォーツ時計で定期的に原子時とのズレを電波放送によって修正するために、その精度は原子時計のそれに等しく、10万年に1秒と言われる。究極の超高精度を持つ家庭用時計。
2001年10月に佐賀県境の羽金山に、わが国で2番目の発信所が設置され、国土のすべてをカバーできるようになり、九州でも利用可能になりました。
この時計の出現で時計売り場ではアナログ、デジタルを問わず、すべての電波時計は1秒の狂いも無く時を刻んでいる、気味の悪いほどにピタリです。
いっせいに同じ時刻表示に変わるデジタル時計はホラー映画の一場面にも感じられます。
(現在、腕時計タイプのものも多数発売されており、修正電波の周波数が合致すれば、国内外での使用も可能)

“機械式腕時計の復権”
そんな性格(正確)苦手です。
現在の時計は時刻表示の機能の点からみれば、秒単位の正確さで、アナログ、デジタルいずれでも安価なクォーツ時計が手に入ります。
われわれの生活は知らないうちに、超高精度の原子時にコントロールされ、高精度のクォーツ時計に見張られている状況になっています。
複数の時計をTPOに応じて着替える人も多くなりました。こんな時代だからこそ、でしょう、正確さではとてもクォーツ時計には及ばない、しかし優しく時を刻み、これまで進歩してきた人間の手仕事の、すばらしい技術を間近に見られる、小さいながらもメカが実感される、そんな機械式腕時計が人々に受けています。
コチコチとけな気に時を刻むさまは、精神安定の作用もあります。
また中年以上の人は、若い頃、進学や成人などの節目に、お祝いの腕時計を貰ったり、贈ったりした思い出もあるでしょう。

ガチガチに正確な時刻は電波時計に、TVに、ラジオに、117に、任せればいいんです。

“私の時間”
自宅にいる時、原則として腕時計はしません、外出、往診の時は大雑把な時間を見る為に、ストップウォッチ代わりにつけ、
趣味のハイキングや釣りに出かける時には丈夫な時計をつけます。
2~3ヶ月に1度、電波時計を持って、家中の壁掛け時計の修正をします。

こんなことを言うと、時間に几帳面と思われるかもしれませんが、ちょっとルーズな、久留米時間、日向時間が好きです。
いちばん好きな時間は、渓流の流れに足先をひたし、川辺に横になり、何にもしないで、ただぼんやりと、流れの音や鳥の囀りに耳を傾ける、そんなひと時です。

正確無比の電波時計よりも、いつも2分ほどズレて鳴っている定時のサイレンのおおらかさに軍配を上げたい気分です。

癪に障るほど正確な、電波時計を3000円ほどで購入し、時間や時計が気になって調べてみたら、知らないうちに、40年以上も前から、原子時計が刻む、国際原子時の上で生活していることが判明しました。
これからは、もうとっくに半分を過ぎてしまった、人生という持ち時間を自分自身の時計で、速くなったり、遅くなったり、しかし、確実に刻んでいきたいものです。

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