一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • アトピー性皮膚炎
  • 投稿者:永田皮膚科医院 院長 永田正和

アトピー性皮膚炎に対する現在の主な考え方は、皮膚乾燥のためバリアー機能の低下(外からの弱い刺激で簡単に湿疹を生じる遺伝的体質)がある人に、内外のさまざまな原因が加わって、かゆみの強い湿疹を慢性に繰り返す病気とされています。この病気を悪くする原因の中には、ダニ、ホコリ、カビ、汗、汚れ、洗剤、シヤンプ-、玩具、食物、ストレスなど日常生活の中にさまざまな増悪因子があるために、いろんな検査をしても原因がなかなか見つけ出せないのが現状です。
この病気の本態がまだ完全には解明されていないため、これ一発ですっきり治ってしまうような治療法は残念ながらまだありません。このため「これでアトピー性皮膚炎は治る」といった怪しげな情報が氾濫し、患者さんや、お母さんはどれを信じて良いのか分からずますます混乱し、大きな社会問題にもなっています。「タマゴをやめても治りません」「体質改善をしているのですが治りません」等いろいろ悩んで受診される方もたくさんいらっしゃいます。
残念ながら最初にも書きましたが、食事だけが原因ではないのですから食事制限をしても治りませんし、遺伝的背景に基づいた皮膚の乾燥やバリアー機能の低下があるため、遺伝子治療でも行わない限り体質を変えることは不可能と考えられています。最近の研究ではアトピー膚炎の患者さんでは、角質細胞間脂質であるセラミドの減少があるために皮膚が乾燥しやすく、このためバリアー機能が低下し、外からの弱い刺激でも湿疹を作ることが明らかにされています。そこで治療のポイントは、いかにしてこの皮膚の乾燥を改善し、正常の皮膚に近い良好な皮膚の状態を保ち、さまざまな増悪因子をできるだけ取り除くことが大切です。
アトピー性皮膚炎の大部分は自然に治ることが認められています。しかしながら症状のひどい状態のままでは自然治療は起こりません。症状をおさえた良好な皮膚の状態を続けることで自然治療が起こります。このためには徹底したスキンケアが重要になります。
治療に関して具体的なことも書きたかったのですが、一般的なことになってしまいました。アトピー性皮膚炎で治療上の不安(ステロイド外用剤の副作用や食事療法など)や悩みのある方は皮膚科専門医に一度相談されたらいかがでしょうか。新しい外用薬も開発されました。

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