一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • ヘリコバクターピロリについて
  • 投稿者:平和クリニック 院長 平辻 良和

ピロリ菌は人間の胃の中に住んでいる細菌です。1980年代に発見されましたが、この菌が胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因となっていることが、最近わかってきました。ピロリ菌は約4マイクロメーターで、鞭毛をスクリューのように回転させ、らせん状の本体を回転させて前進,後退させて移動します。人間に例えると、100mを5.5秒で移動できます。

長い間、強い酸性の胃の中の環境に住める細菌はいないと信じられてきました。しかし、ピロリ菌は、胃のなかで,生きていたのです。その秘密は、ピロリ菌がウレアーゼと言う酵素を持っていたからです。ピロリ菌は胃のなかの尿素からアンモニアを作り出し、アンモニアが胃酸を中和し、自分の周りに中性の環境を作り出しその中で生きていたのです。

ピロリ菌は、胃潰瘍、十二指腸、胃MALTリンパ腫、胃ガン、萎縮性胃炎、過形成ポリープ等に、深く関与していることが分かってきています。ピロリ菌を除菌することにより、これらの疾患の発生が抑えられるとの報告が、蓄積されてきているからです。特に前3疾患は除菌が勧められる疾患です。他の疾患も除菌が望ましいと言われています。

ピロリ菌の感染診断は、現在、消化性潰瘍が、確認され、治療を目的とする場合、保険適用になっています。診断は胃カメラを用いる方法と、用いない方法があり、尿素呼気試験法は、胃カメラを用いず、精度も優れ簡便な方法です。1度、ピロリ菌に感染しているか検査されてはいかがでしょうか。

もし、ピロリ菌に感染していれば、除菌治療をすることを、お勧めします。治療は、簡単でプロトンポンプ阻害剤と、2種類の抗生剤を1週間、飲むことで、約70-90%ピロリ菌が除菌できると言われています。除菌をすることで、ほとんどの症例で、除菌前に有していた上腹部症状は消失または改善しており、こういった患者さんには、多大の貢献になると思われます。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍でお困りの方は、1度、専門の医師に相談されてみたらいかがでしょうか。

平成19年6月

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