一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

田中内科医院 院長 田中 泰之

  • 一般家庭における新型インフルエンザ対策
  • 投稿者:田中内科医院 院長 田中 泰之

4月メキシコでの新型インフルエンザ発生以来政府系機関、新聞等のマスコミさらに各種HPより咳エチケットを含めた新型インフルエンザへの対応が記載されていますが、非常に重要なことなのでここでも取り上げたいと思います。

1. 咳エチケット
一番有効なことは新型インフルエンザにかかった人がそれ以上病気を広げないことです。
特に咳・くしゃみは周りの人に新型インフルエンザウイルスを含む病原菌を効果的に広げてしまいます。そこで、咳・くしゃみの症状のある人には守っていただきたいエチケット、咳エチケットがありますので少し説明いたします。
下記のポスターは米国疾病対策予防センター(CDC)も啓発用に利用しているものです。
内容は
病原菌を撒き散らしほかの人を病気にすることはやめましょう!
咳エチケット
・咳やくしゃみをするときはティシュ、マスクあるいは上腕の袖で顔を覆う
・ティシュはすぐゴミ箱に捨ててください
・手では覆わないようにしましょう
手についた病原菌をあちこちに広げる可能性があります。
・咳やくしゃみの後は手を石鹸で洗うか速乾性のアルコール性消毒液で消毒をしましょう
となりますが、国内で発表されているものとの一番の違いは咳やくしゃみ時に手で覆うことを避け上腕の袖で覆うことを推奨していることです。手で覆ってしまうと通常すぐに手を洗う方法なく手についた病原菌をあちこちに広げてしまう可能性がありますが、上腕の袖だと他と接触することが少なく洗うことができなくても広げる可能性が低いと考えられているからです。

2. 感染予防
20世紀に入っての3度のパンデミックの経験から新型インフルエンザが出現して1~2年以内に25-50%、数年以内にはほぼすべての国民が感染し以後は通常の季節性インフルエンザとなっていきます。よって今回の新型インフルエンザも感染を避ける事はかなり困難なことと考えられています。ただ、重篤化しやすいと考えられている人々 (季節型インフルエンザの場合と同様と想定されています。また重篤化する割合は低いと考えられています)においては秋以降実用化されると考えられる新型インフルエンザ用ワクチン接種後の感染がより安全と考えられるのでそれまでは感染は可能な限り避けるべきことになります。
対策としては
①外出を避ける(特に混雑しているところ)
②手で目、鼻および口を触ることを避ける
③石鹸による手洗いあるいは速乾性のアルコール性消毒液による消毒を頻回に行う
④マスクを着用する
があげられます。特に①.が大事でそれが避けられないときにマスクの着用を考えるのが肝要かと考えます。現在マスクの確保は困難ですが、可能なら混雑しているところでは着用を考えてください。ただ、このときマスクの表面を触らないこと、はずすときは紐の部分をもってはずし、ふたつきのゴミ箱に廃棄後石鹸による手洗いあるいは速乾性消毒液による消毒を行うことが必要になります。

3. 最後に
今のところ今回の新型インフルエンザは健康な方の大部分には大きな健康被害を起こしていません。また、症状発現前日より周囲に感染させることもありなかなか感染予防は困難です。ただ、発症した人が咳エチケットを実行することによって広がるスピードを押さえることができます。皆さんで咳エチケットを広めましょう。

参考)季節性インフルエンザにおいて重篤化しやすい症例
・5歳未満の小児
・65歳以上の高齢者
・18歳未満の若年者でアスピリンの長期投与を受けているもの
インフルエンザ後にRye症候群をきたす可能性がある
・妊婦
・小児及び成人で慢性の肺、心血管、肝障害、血液疾患、神経疾患、神経筋疾患
糖尿病等の代謝異常を基礎疾患として持つもの
・小児及び成人で免疫抑制状態(ステロイド等の薬剤投与,AIDS)にあるもの
・養護施設、その他慢性介護施設居住者

平成21年6月

PAGE TOP