一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 寝る親子は育つ~親子で睡眠を見直してみませんか~
  • 投稿者:こぐま学園診療所 所長 金子 美香

 コロナ禍の巣篭もり疲れで睡眠の質の向上に関心が向き、某飲料水が入手困難になっていることをご存知の方も多いと思います。睡眠を見直す潮流はとても良い傾向で、一時的なブームで終わってしまわないことを願っています。診察場面では、1歳代でスマートフォンなどのフリック操作を身につけているお子さんに出会うことも多くなりました。電子媒体が身近にあり、それらに没頭するあまり睡眠時間が短くなっているお子さんや、夜間何度も起きてしまうお子さんを診察することもあります。

 定型発達とされるお子さんにも睡眠障害はありますが、発達障害のお子さんはその2〜3倍の頻度(約60〜80%)で睡眠障害が合併します。その睡眠の課題は乳児期からあり、相談に来るまでご家庭でがまんしていたと話されることもしばしばあります。

 言葉の遅れ、育てにくさ、行動の問題(多動、衝動性)などを抱えて相談にくるお子さんの中にも睡眠の課題がみられます。睡眠の課題が改善することで行動の問題が改善するお子さんもいます。また、お子さんが眠れるようになったご家族は口を揃えて「楽になった」と話されます。行動の問題が改善されたことによる場合もありますが、眠れない子どもに付き合うことでお母さん達自身の睡眠時間が確保できず、日中活動や健康、精神状態に支障をきたしている場合もあるからです。実際にお母さん達の育児ストレスを比較すると、睡眠に課題あるお子さんを持つお母さん達は課題のないお子さんを持つ方々に比べて有意に高い育児ストレスを抱えていました。

 「寝る子は育つ」という諺の通り、睡眠の成長、発達への影響は軽視できません。睡眠不足と、免疫力の低下、日中の活動性及び集中力の低下、認知機能の低下、自律神経の不調、頭痛、肥満、老化などとの関連が、様々な研究データとして報告されています。実際に起立性調節障害(自律神経の不調)、頭痛のあるお子さん達の診療では、睡眠指導が欠かせません。またよく眠れるようになって、保育場面での活動性が活発になるお子さんや、便秘が改善するお子さんも確認しています。

 必要睡眠時間は米国のNational Sleep Foundation(図1)が年齢別に推奨していますが、幅もあり、その範囲で個々人の適正な睡眠時間を検討していく必要があります。また、総睡眠時間だけではなく、入眠時間にも目を向けて質の良い睡眠を確保することも大切です。

 では睡眠の課題がある場合にどうしたらいいのか?まずは睡眠のリズムを確認してみることをお勧めしています。睡眠表(図2)に、寝る時間、起きる時間を図2(ピンクのライン)のように記入します。昼寝の時間も記入し、日々のリズムを確認してみてください。2週間分記入すると大体のリズムが把握できます。それをもとに以下の項目をチェックしていきます。

 

1.昼寝の時間が長すぎていないか?昼寝から起きる時間が遅くないか?

2.入眠時間が遅くないか? 就寝から入眠までの時間がかかり過ぎていないか?

3.朝起きる時間が遅くないか?

4.夜中に何回も起きているのか?

5.夜中に泣き叫んでいるか?息苦しそうにしているか?

 

 その上で、1〜5の原因を探っていきます。朝起きて光を浴びる時間で入眠時間が設定されるため、起床時間が遅いと入眠時間が遅くなります。昼寝の時間が長すぎる、あるいは昼寝から起きる時間が遅い(16時以降)と入眠時間が遅くなります。日中活動が十分でない場合も入眠時間が遅くなる、あるいは夜中に起きてしまう(中途覚醒)原因になります。また、寝る前にTVやパソコン、スマートフォン等のブルーライトを浴びると脳が覚醒状態になるため、寝入りが阻害される原因になります。入眠前に子どもを興奮させておいて、親の都合で寝かせようとしても入眠がスムーズにいかない場合もあります。

 それぞれのご家庭で生活リズムがあるため、一概には言えませんが、もし睡眠で悩んでいるご家庭があれば、下記の工夫をして頂くだけでも改善すると思います。

 

1.毎日同じ時間に起きる(平日も休日も)

2.朝日を浴びる

3.朝ご飯を食べる

4.日中活動(外遊びなど)をしっかりする

5.寝る1〜2時間前にはブルーライトを発するものとの接触を止める

6.入眠儀式を作る(お風呂→着替え→歯磨き→絵本→就寝など)

 

 ちょっとした日常生活の工夫で睡眠が整うお子さんも大勢います。一方でどんな工夫をしても改善しないお子さんがいるのも事実です。その場合は、医師に相談してください。

 「たかが睡眠、されど睡眠」で、睡眠は大人にとっても大切です。そして発達過程にある子ども達にとってはより大切だと考えています。この投稿が、親子ともに改めて睡眠を見直すきっかけになれば幸いです。

 

図1

 

解説:

①橙色:推奨睡眠時間

②薄橙色:許容睡眠時間

③青色:推奨しない睡眠時間

 

1~2歳は11~14時間の睡眠時間が適切。許容睡眠時間として、短い場合9~10時間、長い場合15~16時間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図2

 

 

(2歳児と仮定した場合)

睡眠時間:9~12時間(平均10.5時間)

入眠時間:22時~23時

中途覚醒:なし

(評価)

総睡眠時間は許容範囲内だが、入眠時間が全体的に遅い。さらに23時以降の入眠が2週間の記録の中で6日あるため、昼寝時間、起床時間の工夫と日中活動の様子を確認する。

 

 

 

 

 

 

令和4年12月

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