一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 更年期障害
  • 投稿者:松尾医院 院長 浦江 美由紀

更年期
  更年期とは、卵巣における卵胞の消失による永久的な月経の停止と定義される閉経の前後、すなわち40~60歳の期間をさします。
この期間に女性ホルモンの低下や、欠落によって現われる様々な愁訴を更年期障害と呼びます。
更年期障害
 どのような症状があるときに更年期障害を疑ったらよいでしょうか?
「のぼせ・ほてり・発汗」自律神経失調症状・・ホルモン的要因に関連していると考えられています。
「抑うつ・不眠」――――精神神経症状・・・・・・精神負荷やストレスなどの要因が関係しています。

更年期外来受診者の主訴としてどのようなものが多いのでしょうか?
「のぼせ・ほてり・発汗」は80%に、「抑うつ・不眠」は50%に認められ、上位20位の症状は下記のようになります。

1; 疲れやすい
2; 肩こりがある
3; 物忘れする
4; 汗をかきやすい
5; 神経質である
6; 腰や手足が冷える
7; 腰が痛い
8; つまらないことでくよくよする
9; 顔が熱くなる(ほてる)
10; いらいらする
11; 不安感がある
12; 覚えられない
13; ゆううつになることが多い
14; 夜眠ってもすぐ目を覚ましやすい
15; 意欲がわかない
16; 手足の節々の痛みがある
17; 髪のボリュームがすくなくなる
18; 夜なかなか寝付かれない
19; 頭が痛い
20; 興奮しやすい

更年期障害を疑う有力な情報は、年齢が更年期(生殖期から生殖不能期への移行期)の年代であること。通常は閉経をはさんで前後5年ずつの期間です
しかし、これは一般論であり、40歳未満でも60歳以上でも更年期障害があることがあります。しかし、40歳未満は、月経が不順になっているか、閉経になっている、もしくは婦人科疾患で両側の卵巣摘出術を受けている場合です。なお60歳以上の場合は、閉経が55歳と遅い場合で、この年代であっても、更年期障害の可能性は、ありえます。

更年期障害の特徴
更年期障害の症状及び愁訴の特徴は、多様にわたり、しかも固定的ではなく、時々刻々変化に富みます。一つならず、複数の症状・愁訴があり、それが、一定せずに変化する場合は更年期障害を疑います。
また、「のぼせ・ほてり・発汗・冷え」といった血管運動症状を主体とする場合ですが、これらの症状が一つも無い場合は、典型的ではなく、更年期障害である可能性は少ないです。
「のぼせ・ほてり・発汗・冷え」に加えて、「抑うつ・不眠」のみならず、「意欲がわかない」・「不安感」・「神経質」・「イライラする」・「興奮しやすい」などの精神神経症状が見られる場合が最も典型的です。

更年期の症状をセルフチェック

当てはまる症状の強さの点数

症状
無し
顔がほてる
10
すぐ汗をかく
10
腰や手足が冷えやすい
14
動悸がする
12
寝つきが悪い・眠りが浅い
14
怒りやすくイライラする
12
ゆううつになる
頭痛・めまい・吐き気がよくある
疲れやすい
肩こり・腰痛・手足が痛い

更年期指数の自己採点の評価法
0~25点・・・異常なし        26~50点・・・食事、運動に注意
51~65点・・・更年期障害の疑い  66~100点・・計画的な治療が必要

一方、次のような場合は、更年期障害の可能性は少ないと思われます。
1 更年期以前から精神神経症状がある場合。

2 不定愁訴が極めて多彩でかつ執拗で頑固であり、
愁訴が日々、刻々激しく変化する場合。

3 問診、および心理テストで中等度以上の神経症・うつ病・ヒステリーなどの精神神経的疾患の可能性がある場合。

更年期障害の治療
 非薬物療法
心理療法・カウンセリング

 薬物療法
消退したホルモンを補うホルモン補充療法
漢方剤を用いる漢方療法
向精神薬

などがあります。

薬物療法の特徴
 ホルモン補充療法
有効性が高いですが、副作用(乳がん・子宮体がんリスクの上昇、血栓症など)もあります。
(日本人における乳がんリスクは0.432と少なくともリスクの上昇は認めていません。)
 漢方療法
種類が豊富で副作用が少ないですが、効果が現われるまで時間かかることもあります。
 向精神薬
一般的に有用性が高いといわれていますが、副作用もあります。

更年期障害は誰もが通る道
 更年期障害は経験した人しかわからない大変苦痛な症状です。人によって症状の度合いは様々です。
身体の辛さもありますが、何よりも自分の身体と心とがうまくコントロール出来ないことと、ついヒステリックな態度で周囲に接してしまうために、人間関係での不安も抱えてしまうケースも多く見られます。
そのため、一人で悩んでしまう事になってしまい、悪循環をおこしてしまいがちに。更年期障害はだれもが通る道。きちんと更年期障害と向き合い、適切な治療をうけることが大切です。

平成20年1月

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