一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 涙は十分あるのにドライアイ?
  • 投稿者:広瀬眼科医院 廣瀬 晶一

ドライアイだからと人工涙液やヒアルロン酸の目薬を一日に何回も点眼しているが症状が改善しない、と、訴えられる患者さんがこのところ多く受診されます。
涙は十分なはずなのに「目が乾く」、「目がゴロゴロ、ショボショボする」、「目が痛い」、それらの違和感は「目を開けていられない」、ほどつらいのです。
ドライアイはその言葉から、“目が乾く”というイメージがありますが、涙の量は十分にあるのに、なぜ、このような不快な症状がでるのでしょう

 ドライアイは涙が異常なのが原因です。涙の異常は大きく2つに分けられます。1つは涙そのものが減って乾いてしまう「量的な異常」、そしてもう1つは、涙の性質が変化し、涙液層の安定性が悪くなり潤いを保てない「質的な異常」です。

 この質的な異常のドライアイの原因のひとつ、目の表面の水濡れ性の低下に注目が集まっています。目の表面を覆っている涙は、角膜の表面に内側から順番にそれぞれムチン層、水分層、油層という3層を作って目の表面の涙を保持して潤っていますが、これらのいずれかに異常が起こると、目の表面に涙を維持することができず、濡れなくなってしまい(潤いを保てない)、ドライアイの症状を感じてしまうのです。
中間の水分層の外側の油層と内側にあるムチン層に鍵がありそうです。実例の中には脂分を分泌する腺(睫毛よりやや内側にある)をアイラインでべったりふさいでいる高校生女子のドライアイもありますし、防腐剤(界面活性剤)の入った点眼をしすぎて涙表面が壊れてしまうドライアイ例もあります。
ムチンは、涙以外にも唾液や胃液などの体内で分泌される液体に含まれているネバネバした成分の総称です。目の表面のムチンには角膜ムチン(膜型ムチン)と結膜ムチン(分泌型ムチン)があって、目の表面の潤いを保つという役割を発揮するようなのですが、ムチンの働きが悪いと目の表面を覆う涙の膜が壊れやすくなってしまい、うまく涙を止めることができず、涙がすぐに流れてしまうというわけです。これではドライアイ症状を発症してしまいます。ムチン産生を即す点眼剤も出ていますのでドライアイの原因を考慮したうえでの使用もいい選択だと思います。

ドライアイの原因を考慮し、その原因に応じた治療の選択はとても大切です。環境や体調の改善はもちろんですが、今回は涙量が十分あるのにドライアイ症状を呈する方に質的な涙の異常がないか、目の表面の水濡れ性が低下していないかの検査をすることを特に伝えたいと考えました。

 涙の量が十分のようでも、ドライアイの自覚症状が強いという場合には、眼科専門医の診察を受けてください。

平成24年10月

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