一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 膝にたまった水、ヒアルロン酸について
  • 投稿者:古川整形外科医院 院長 古川 泰之

 膝にたまった水(=関節液)を抜くと(=関節穿刺)くせになると患者さんからよく聞きます。
確かに抜いた後、すぐにたまって度々抜かざるをえないことがありますが、抜くことが原因で水がたまるわけではありません
本来関節液は必要なもので関節包の内面に滑膜という薄い膜があって、そこでつくられています。
関節軟骨の栄養は血流によるのではなく、関節を動かす際に関節液が軟骨に摺りこまれることによりゆきわたります、また関節液には摩擦を減らす役割があり、それがなくなれば関節軟骨はすぐに擦り切れてしまうでしょう。
正常では関節面を潤す程度のわずかな量で、たとえ抜こうとしても抜けません。
関節の滑膜に炎症がおこると関節液が増えて水がたまった状態になります。
代表例は変形性膝関節症、関節リウマチ、化膿性関節炎などです。
関節穿刺は、ある程度の痛みを伴い、お気の毒ではありますが、どうしても必要な場合があります。(初診時、特に化膿が疑われるとき)
関節穿刺液の量、色、混濁の有無、粘調度など、さらに細菌検査や結晶の有無が診断に役立つからです。
また多量にたまっている場合は関節穿刺によって関節内の圧力が下がり痛みがとれ楽に膝が曲がるようになり治療の意味もあります。
診断がすでについていて、量が多くなければ、必ずしも抜く必要はありません。

関節液の主成分が、テレビCM等でお馴染みのヒアルロン酸です
変形性関節症やリウマチの治療にヒアルロン酸を関節内注射することがありますがこの場合関節液がたまったまま注入すると薬液が薄まってしまい、効果が弱くなるので注入する前に関節穿刺が必要です。
もちろん針は穿刺をした際、針を抜かずに注射器をつけかえて薬液を注入しますので刺すのは1回だけです。
ヒアルロン酸の膝関節内注射は変形性膝関節症や関節リウマチに(五十肩にも)有効性が認められており、通常1週間に1回、連続5回を1クールとして行います、保険も効きます。
また生体にもともと存在するもので重大な副作用はないようです。(眼科や美容整形でも使われています)
よく患者さんから質問されますが、ヒアルロン酸の経口摂取による、人での有効性については少なくとも関節軟骨に対しては信頼できる科学的裏付けは見当たりませんし、もちろん保険でも認められておりません、かなり高価なのも問題です。
膝に水がたまった場合、膝の負担を減らし(例えば重いものを持たない、減量する、正座など深屈曲をさける、安静、杖などにより免荷するなど)、消炎鎮痛剤の内服や外用薬を使い、リハビリも必要ですが、原因によって対処法が異なりますので医師に相談してください。

平成22年3月

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