一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

林整形外科医院 院長 林 晃一

  • 骨折について
  • 投稿者:林整形外科医院 院長 林 晃一

整形外科は筋、骨格系の疾患を扱う科で、特に骨折の治療は専門分野の一つであります。「骨折」と一言に云っても千差萬別で安静と固定で簡単に治せるものもあれば、複雑な状態で特別な治療を要する場合もありますので、絶対軽視してはいけません。

 

簡単に説明しますと、骨折とは何らかの原因によって骨の連続性の断たれた状態を言います。
その大多数は急激な外力によって発生する外傷性骨折ですが、比較弱い外力が繰り返し加わって、金属の疲労現象のように骨質の連続性が断たれた状態を疲労骨折と言います。
また骨自体に何らかの病変があるときは、正常では骨折しない程度の外力によって骨折を生ずる病的骨折があります。

骨折した場合は、まずどのような形で骨折したか、骨折した部位と骨折した患者さんの年齢によって治療法は驚くほど違います。
人の骨は年代によって変化します。
 子供の骨はまだ軟骨部分が多く、柔らかいのが特徴です。成長段階にあるため修復の能力が高く、自然に治りやすいので、よほど複雑な骨折でない限り普通は手術しない治療方法を選びます。
しかし処置が不適切だと変形をひきおこしかねません。
一方、成人の場合は骨の修復力は子供ほど高くないので早期社会復帰の意味で手術治療のも1つの選択肢であります。特にお年寄りの骨はわずかな力でも折れやすく、安静にしすぎると寝たきりの原因にもなります。寝たきりにならないように気を配らないといけませんので強靭な金属で折れた骨を止めて、早く離床生活を図るのが肝心です。

骨折の部位によって治療方法も大きく違います。

たとえば長い筒状の骨が骨折した場合は、戻せるならできるだけ元の状態に戻してからギプスで固定します。新しく出来た骨が固まってから固定を外します。
しかし関節に近い骨が骨折した場合、関節の動きを邪魔しないように骨のもとの位置をきれいに戻さないと関節面に”ずれ”ができてしまい、骨折が治っても関節は正常に動きません。だから高度な技術を習得した整形外科専門医に治してもらわないと、将来は痛みや運動障害が残ることがあります。

 

急激な外力による外傷性骨折の場合は骨折だけではなく、骨折した部位の周囲の筋肉や神経、血管の損傷も注意しなければいけません。そのときの治療は骨折だけではなく、筋肉、血管、神経の損傷をも治してくれる整形外科の病院を訪れたほうが良いと思います。

スポーツ選手、とくに陸上競技やマラソンの選手など長い時間に激しい運動を繰り返すものに多く見られるのは疲労骨折です。はじめは骨の表面の膜に炎症をおこし、腫れと痛みを覚えるようになり、やがて横走する骨折線を認めるようになります。安静にすればたいてい自然に治るが、腫れと痛みに対しては応急処置が必要です。

特には外力も受けていなかった、あるいは普通のひとには骨が折れない力で簡単に骨が折れる場合はまず病的骨折を考えないといけません。
そのなかには主に(1)骨腫瘍の骨破壊で骨折する場合と(2)骨感染症(化膿性骨髄炎)による骨折(3)骨粗鬆症の圧迫骨折の3通りがあります。
(1)と(2)は全年令層にみられるが、(3)は50歳すぎ閉経後の女性およびお年寄りの方に良くみられます。

 

いずれにしてもおかしいと思われる時には適切な病、医院で適切な治療を受けることは大切だと思います。
[参考文献]
1).日医ニュース(13)第912号 5.Sep.1999
2).J.Crawford Adams (1978) Outline of Fractures
seventh edition Churchill Livingstone

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