一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 白内障手術Q&A その2
  • 投稿者:橋本眼科医院 院長 橋本 雅晶

Q1 白内障手術の歴史は?
A1 紀元前800年頃:インドのスシュルタが、無麻酔で針で眼球を突き、水晶体を脱臼させ硝子体内に落下させました。
1800年以降:角膜の外側の結膜と強膜を切開し水晶体を摘出。近代的な眼科手術の幕開けです。
1949年:イギリス人リドレーが眼内レンズを発明。1967年にはアメリカ人ケルマンが超音波乳化吸引装置を発明。しかし安全性に諸問題を抱え、まだ普及に至りませんでした。
1960年代、冷凍法にて水晶体を吸い付けて全摘出し、術後は分厚い凸レンズの眼鏡。
1970年代:厚さ5μの水晶体の皮膜を残して水晶体の核を娩出し、この皮膜を利用して眼内レンズを固定。切開創の幅は11mm。(図1)核娩出の際に角膜内皮細胞や虹彩に多大な組織障害を生じ、かなりの術後炎症や術後乱視を生じました。

1980年代:超音波乳化吸引装置が進歩し普及しました。(図2)水晶体核片を分割して破砕し吸引除去し、眼内レンズを水晶体嚢に固定します。(図3)
切開創は6mm。その後折り畳み眼内レンズの発明(図4)で切開創は3mmとなり、小切開創白内障手術の幕開け。
眼内レンズの保険適応と高齢化社会の到来により手術症例数が爆発的に増加しました。
  

2000年代:切開創は3mm弱が主流に。手術の安全性が高まり、白内障手術は「水晶体再建手術」と呼ばれ、昔の「開眼手術」から「屈折矯正手術」へ大きく変貌を遂げました。現在国内で年間100万眼の水晶体再建術が実施されています。

Q2 眼内レンズの進歩は?
A2 ①多焦点眼内レンズ:本来近くも遠くも裸眼で見えるはずですが、「実際には近くも遠くもなんとか見えるけどイマイチ」の場合が多いようです。保険適用は無く全額自費(両眼で約90万円)ですから、「こんなはずではなかった。」というケースも有ります。夜間対向車のライトを見ると、光がにじんで見えます。(グレア)
②非球面レンズ:球面収差による像の歪を解消。
③乱視用レンズ:従来は近視・遠視の矯正のみに留まっていた白内障手術が乱視矯正も可能に。
④黄色着色レンズ:紫外線をカットし,滲出性加齢黄班変性を予防。(図5)
⑤折り畳みレンズ:昔は直径6mmのレンズを挿入するために6mmの切開創が必要でした。現在では大多数の眼科でアクリル製折り畳み眼内レンズが3mm弱の切開創で標準的に挿入されており、術後の炎症・医原性乱視が劇的に軽減し術後安静も軽減し、早期の視機能回復が可能となりました。

Q3 超音波乳化吸引手術とは?
A3 例えば、岩を砕く場合、削岩機を岩に強く「押し当て」て削岩機の先端の振動で岩を砕きます。
白内障手術の場合、適当な大きさに分割された水晶体核をポンプの陰圧で「吸いつけ」て、超音波の周波数(毎秒4万回以上) で振動する金属先端で破砕して除去します。
超音波の音波エネルギーではなく、金属先端の縦振動の機械的エネルギーが水晶体核に接して砕くのです。
「押し当て」と「吸いつけ」の違いこそあれ、白内障手術の場合、超音波乳化吸引装置で水晶体を細かく砕いて手術します。
図2をご覧ください。金属棒の周りにシリコン製の覆いが有り,その間隙から灌流液が眼内に流れ、眼球が虚脱しないように眼球内圧を一定に保ちます。
中空の金属棒は水晶体核片を陰圧で吸いつけ捕捉し、縦振動を加え削岩機の要領で砕いて乳化吸引します。
最新のマシーンは吸引圧・吸引流量・パワー等を細かくプログラム化し電子制御することにより、初心者の術者でさえも効率的で安全な手術が出来るようになりました。
手術合併症や術後炎症の発生がほぼ皆無に近づき術者のストレスは大幅に軽減しました。

 近代的白内障手術によって皆様の視機能が改善し、充実した快適な生活を送られることを願ってやみません

以前、「白内障手術Q&A その1」 を投稿しています。ここをクリックしてご覧ください。
http://www.ogorimii-med.net/advice/hasi-ganka3.htm

平成21年11月

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