- 子宮頸がんワクチン(HPV:ヒトパピローマウイルスワクチン)のその後
- 投稿者:山下こどもクリニック 院長 山下 康博
HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンについて、いろんな講演会があり、その効果が子宮頸癌だけでなく、HPV感染が引き起こす他の疾患にも効果がある事。思春期の女児だけではなく男児にとっても大切なワクチンであることが報告されています。それを、まとめてみました。
Ⅰ:ヒトパピローマウイルス(HPV)について
(1)性質
①大半は12か月以内の一過性感染
②一部の発癌性遺伝子型が持続感染する
③性的接触後感染成立し、10年程度で前癌病変発症
(2)感染経路
①性行為(性交、口腔性交、肛門性交)
②皮膚、粘膜の直接接触(性器と性器の接触、キスなど)
③母子感染:垂直感染(感染母から、経産道感染し新生児が呼吸器乳頭腫に)
④環境中では長く生存できないので、トイレ、プールでの感染はない
(3)HPV感染による疾患(隆起性病変を起こしやすい)
① 50歳までに女性の80%が感染する
② 男性→女性への感染させる率 1年:28%、 5年:50%
a.中咽頭癌(60~70%に関与) b.呼吸器乳頭腺腫症
c.尖圭コンジローマ(~100%) d.子宮頚癌(90%以上)
d.膣癌(70%) e.肛門癌(90%以上)
f.陰茎癌(60%)
HPVは以上のような重篤な疾患を引き起こす感染症であり、女性の子宮頸がんだけを引き起こす感染症のように思われているが、男女関係なく、感染することで悪性疾患を引き起こす。そのため、諸外国は、公費負担での男性の予防接種も推奨されている(オーストラリア、ドイツ、カナダでは学校での男女の集団接種が行われている)。残念ながら、わが国では男児へのワクチンは認められたが、公費負担ではない。しかし、東京都では男児への公費負担接種している地区もあり、地域差がある。
Ⅱ:子宮頸がんについて
(1)子宮頸がんの発生状況
①2017年の子宮頚癌発症者は11000人、2018年の頸癌による死亡者は2800人との報告
②分かりにくいので表現を変えると女性が女子校に通っていたと仮定したら
a.子宮頸癌に80人に一人:2クラスのクラスメートの一人が頸癌に罹り
b.子宮頸癌で301人に一人が死亡:9クラスのクラスメートの一人が頸癌で死亡する
Ⅲ:肛門癌について(HPV感染関与が90%以上)
①年間約1000名が発症し、発見が遅れ予後不良
②5年生存率が42%で、ステージ4の場合、人工肛門の造設は避けられない
Ⅳ:子宮頸がんワクチンについて:現在は9価ワクチンが接種されている。
①低リスク:6型、11型(尖圭コンジローマの95%に感染関与)
②高リスク:16型、18型、31型、33型、45型、52型、58型(肛門癌の9%に感染、子宮頸がんの88.2%に感染関与、外陰上皮腫瘍、膣上皮腫瘍に感染関与)
(1)ワクチン効果期間(9価ワクチン):効果持続は11年~12年との報告がある。
(2)子宮頚癌、肛門癌の場合、17歳未満でワクチン接種すれば、発症予防効果非常に高い
(3)9価ワクチンを12~14歳で接種すれば2回接種でよい。15歳以上での開始は3回接種
WHO,欧州では子宮頸癌の排除を目指しており、欧州では男女の性別を問わず、少なくとも90%の接種を目指している(オーストラリア、ドイツ、カナダでは学校での集団接種を行っている)。
令和8年3月