- 便秘薬について
- 投稿者:蒲池病院 佐藤 紫乃
今回は便秘薬について書きたいと思います。
「たかが便秘、されど便秘」便秘が慢性的に続くことによって、日常生活に様々な支障をきたします。自覚症状がなくても、直腸潰瘍、糞便性腸閉塞、消化管穿孔などの消化器局所の合併症を引き起こすのみならず、冠動脈性心疾患、脳卒中などの全身疾患の発症リスクを上昇させることで身体に様々な支障をきたすこともあります。また認知症患者さんなどの不穏の原因になることもあります。よって検査、食事、生活指導または薬物治療がなどの医療介入が必要な病態です。
便秘の原因が大腸癌などの器質的疾患でないことをまずは確認してください。
近年、慢性便秘症に対する様々な新規治療薬が登場しています。従来は生活習慣の改善(食物繊維摂取、発酵食品、適度な運動、排便習慣)で治療効果が得られない場合、まずは酸化マグネシウムなどの浸透圧性下剤、センノシドなどの刺激性下剤といった通常下剤を用いることが提唱されていました。これらの通常下剤を大量に用いても便秘が改善しない患者さんを診ることはしばしば経験していましたが、近年新しい作用機序の便秘薬が登場してきたので紹介したいと思います。
モビコール:腸管内の水分量を増加させ、よって便中の水分量も増加し、便が軟化、便容量が増大することで、大腸の蠕動運動が活発化し排便が促されます。またクセになりにくいので長期使用しやすく、お腹が痛くなりにくいこともあり、小さなお子さん(2歳以上)から高齢者まで、また腎機能障害のある方でも使用可能です。水に溶かして服用するので、錠剤が苦手な方でも服用しやすいです。
アミティーザ(粘膜上皮機能変容薬):小腸に作用して水分分泌を強力に促し、便を軟らかくし大腸通過時間を効率よく短縮します。副作用として吐き気が出ることがあります。特に空腹時に服用すると吐き気がでやすいため、食後に服用します。
リンゼス(粘膜上皮機能変容薬):お腹の張りや痛みを伴う「便秘型過敏性腸症候群」の治療にも使われるお薬です。腸からの水分泌を促し腸管輸送を促進させるだけでなく、腸の知覚過敏(痛みを感じやすい状態 )を和らげる効果も期待できます。こちらも食前に服用します。
グーフィス(胆汁酸トランスポーター阻害薬):小腸の大腸寄りにある回腸末端部での胆汁酸の再吸収を阻害し胆汁酸を大腸に流すことで、大腸への水分の分泌を増やし大腸蠕動運動を活発にさせ、排便回数の増加、便形状の改善効果を促します。効果の発現が比較的早く、服用から数時間で便意を感じることもあります。直腸で便がとどまっているタイプの便秘にも効果が期待できます。食事の刺激により胆汁酸が放出されるすぐ前、すなわち食前に飲むのがポイントです。
これらの新しい下剤は残念ながら従来の下剤と比較して薬価がやや高価ですが、その効果は十分期待できます。
整腸剤や漢方薬を服用してみることも選択肢の一つとして挙げられます。
整腸剤
直接的に便を出すというよりも、お腹の中の環境を整えるサポーターのようなお薬です善玉菌を増やして腸内フローラのバランスを良くすることで、お通じをスムーズにする手助けをします。作用がとても穏やかなため、他の便秘薬と一緒に処方されることもよくあります。
ミヤBM:胃酸に強く、生きたまま腸に届く「酪酸菌」が主成分です。腸内で善玉菌を増やし、悪玉菌の働きを抑えてくれます。抗生物質と同時に飲んでも影響を受けにくいのが特徴です。
ビオフェルミン:ヒト由来の乳酸菌を複数配合しており、小腸から大腸まで広く腸内環境を整えてくれます。古くからあり、多くの人に馴染みのある安心感のあるお薬です。
漢方薬
西洋薬が直接的な症状の緩和を目的とするのに対し、漢方薬は体全体のバランスを整え、「便秘になりにくい体質」を目指すのが得意です。多数ありますが主なものをご紹介します。
大建中湯(だいけんちゅうとう):お腹を中からポカポカと温めて、腸管の血流を改善し、腸の蠕動運動を活発にしてくれる作用があります。「お腹が冷たい」「ガスが溜まってお腹が張る」「お腹がグルグル鳴る」といった、冷えが原因で腸の元気がなくなっているタイプの便秘によく使われます。手術後の腸管運動の回復を助ける目的で処方されることもあります。
麻子仁丸(ましにんがん):カチカチに硬くなった便に水分を含ませ軟らかくし、腸管を潤わせ自然な排便を促します。「コロコロした便」が出る方にてきしており、刺激性が少ないので特にご高齢の方の便秘によく処方されます。
大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう):大腸を刺激し蠕動運動を亢進させ腸管における水分吸収を抑制させるので便を軟化させつつ、排便時の痛みを和らげる作用があります。比較的即効性があり作用も強いです。大黄の含有量が多いので、長期連用は避けたほうが良いです。
慢性便秘症の治療にはステップがあり、まずは生活習慣の改善(食物繊維接種、水分摂取、適度な運動)です。次に効果が得られない場合、膨張性下剤、浸透圧性下剤、必要に応じて刺激性下剤を用い、反応性に乏しければ上皮機能変容量薬や胆汁酸トランスポーター阻害薬の服用を検討する。
便秘は生活習慣とも密接に関係しています。薬だけに頼るのではなく、生活習慣の改善も並行して行うことが必要です。
令和8年3月