一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

神代病院 髙田 由香

  • サルコぺニアとは?
  • 投稿者:神代病院 髙田 由香

医療や介護を話題にしたテレビや雑誌・本のなかで「サルコペニア」という言葉を耳にすることが多くなってきています。

 

サルコペニアとは?

サルコペニアとは、ギリシャ語の筋肉「sarco(サルコ)」と喪失「penia(ぺニア)」からの造語です。1989 年に提唱された概念で、筋肉が減り、からだの機能が低下した状態を指します。握力が低下しているか(男性26㎏未満、女性18㎏未満)、または歩く速度が低下していて(0.8m/秒以下)、検査で筋肉量が基準より減少していることが認められます。加齢が主な要因で、65歳以上の高齢者の1〜29%に該当するといわれています

サルコペニアと並んで「フレイル」という言葉もよく耳にします。フレイルとは、加齢に伴う予備能力の低下のため、ストレスに対する回復力が低下した状態を指します。サルコペニアよりも広い範囲を含む概念で、身体的な問題のほか、認知機能の衰えなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題などから成り、要介護状態の前段階と位置づけられています。フレイルの人はサルコペニアを合併することも多く、サルコペニアがフレイルの引き金とも考えられます。

 

ほかに「ロコモ」という概念も提唱されています。ロコモは「ロコモティブシンドローム」の略で、筋力が低下したり、関節や脊椎などの病気を発症したりすることで運動器の機能が低下し、立ったり、歩いたりといった移動機能の低下をきたした状態をいいます。サルコペニアはロコモの原因の一つです。

 

(ⓒ東京法規出版)

サルコペニアは、ロコモやフレイルを引き起こす大きな要因です。高齢者の健康を考えるうえで重要視されていて、ロコモやフレイルとともに、その診断、予防の重要性が高まっています。

 

サルコペニアかも?と思ったら

①指輪っかテストを試してみましょう。

 

          (ⓒ東京法規出版)

②握力を測る

筋力低下の有無を判断する際には、握力を測定します。男性で28kg未満、女性で18㎏未満の場合は、筋力が落ちていると判断します。

③5回椅子立ち上がりテスト”を行う

身体機能の低下は、5回椅子立ち上がりテストでチェックします。座っている状態から立って座ってという動作を5回繰り返し、終わるまでに12秒以上かかった場合は、身体機能が落ちていると考えられます。

①に加え、②握力、もしくは③5回椅子立ち上がりテストのどちらかに該当した場合はサルコペニアの可能性ありと診断されます。

 

 サルコペニアに対して早期介入、予防を行うことが重要!

サルコペニアの原因は加齢だけではありません。低栄養や活動不足などにも注意が必要です。低栄養でサルコペニアになると、活力や筋力、身体機能が低下します。それによって活動量も減り、さらなる食欲低下をもたらす悪循環が生まれてしまいます。サルコペニア対策は、この悪循環を断ち切ることにつながります。

サルコペニアの対策では、食事対策と運動対策をあわせて実施することが大事です。

 

サルコペニアの食事対策には、たんぱく質を十分に摂ることが大切です。総カロリーを十分に摂取しつつ、たんぱく質の供給源になる肉、魚、卵、大豆を使った料理を毎日の食事にバランスよく取り入れましょう。健康を意識し肉を敬遠する方もいますが、高齢者にとっては肉に含まれる脂質や動物性たんぱく質も重要な栄養素です。

運動対策では、日常的に運動するのが有効です。1日5分、始めてみてください。ウォーキング(散歩)などの有酸素運動も行いましょう。

サルコペニアになってしまったらどうしよう…と怖がる前に、まずは今の食生活や運動習慣を見直して、からだも心も健やかな将来につなげていきたいものです。

 

       (ⓒ東京法規出版)

 

(ⓒ東京法規出版)

 

コロナ禍によって、市や町や公民館でのサークル活動や体操教室などが中止や規模縮小をせざるをえない状況です。感染を恐れて自宅に閉じこもりがちなっていないでしょうか?

 

ご自身・ご家族内で解決することが難しい場合は、自治体で様々な介護予防事業が行われているので、かかりつけの先生や地域包括支援センターにご相談ください。

 

令和3年10月

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