一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • インフルエンザについて
  • 投稿者:石田医院 院長 石田 清和

そろそろ寒くなり、風邪にかかる方も増えてきました。また10月よりインフルエンザの予防接種も始まり、予防接種を受けようかどうか、迷っていらっしゃる方も多いようです。そこで、インフルエンザの基礎知識について説明申し上げたいと思います。

インフルエンザは普通の風邪とは違います!

よく「インフルエンザも普通の風邪なんだから」とおっしゃる方がいますが、普通の風邪とインフルエンザは違います!普通の風邪の症状は、のどが痛くなったり、咳や鼻汁、くしゃみといった症状が多く、「体がきつい、節々が痛む」などの全身症状はあまり見られません。発熱も38度以下のことが多く、重症化することはあまりないようです。

一方、インフルエンザの場合は普通の風邪と同じような症状のほかに、38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身の症状が強くなります。

しかし、インフルエンザの恐ろしいところは、気管支炎、肺炎など重症化することがあるということです。小児では中耳炎、熱性けいれん(ひきつけ)などをおこし、まれに急性脳症(インフルエンザ脳症)を起こして死亡することさえあります。また、高齢者や肺・心臓などに慢性の病気を持つ人は重症化しやすいので、十分注意する必要があります。

また、インフルエンザは「うつる力が強い」のが特徴です。インフルエンザは例年11月~3月に流行することが多いのですが、一旦流行が始まると、乳幼児から高齢者までたくさんの人がかかることや、インフルエンザが流行した年には、高齢者の冬季の死亡率が普段の年より高くなるという点からも、普通の風邪とは違います。

インフルエンザに何度もかかることがあります!

インフルエンザは、A型、B型、C型があります。A型はさらに亜型もあります。いわゆるA/ソ連型、A/香港型というのは、この亜型のことです。歴史的にA型が大きな流行を起していますが、B型もヒトに感染し流行を起こします。C型もヒトに感染しますが、大きな流行は起こさないとされています。A型インフルエンザとB型インフルエンザのウイルスが、同じシーズンの中で複数流行した場合には、A型インフルエンザにかかったあとB型インフルエンザにかかったりすることがあります。

インフルエンザにかかる前に

 予防の基本は、流行前にワクチン接種を受けることです。
インフルエンザにかかりにくくなるだけでなく、ワクチン接種によりインフルエンザにかかった場合の重症化を防ぐと報告されています。インフルエンザは、インフルエンザにかかった人の咳(せき)、くしゃみ、つばなどの飛沫と共に放出されたウイルスを、吸い込むことによって感染します(飛沫感染といいます)。インフルエンザが流行してきたら、高齢者や肺・心臓などに慢性の病気を持つ人や、疲れていたり、睡眠不足の人は、人混みや繁華街への外出を控えることも重要です。

人ののどには粘膜があり、湿った状態でウイルスや細菌が入るのを防いでいます。空気が乾燥すると、のどの粘膜も乾きやすくなり、インフルエンザにかかりやすくなります。外出時にはマスクを利用したり、室内では加湿器などを使って適度な湿度(50~60%)を保ちましょう。十分に休養をとり、体力や抵抗力を高め、常日ごろからバランスよく栄養をとることも大切です。帰宅時のうがいや手洗いも、一般的な感染症の予防としておすすめします。

また、受験生をお持ちの親御さんから質問を受けることが多いのですが、抗インフルエンザ薬をインフルエンザの予防として服用する方法もあります。抗インフルエンザウイルス薬による、インフルエンザ症状の予防効果については、科学的には証明されていますが、その使用に関しては様々な条件があり、一般的な予防法として推奨されるものではありません。また、ワクチンによる予防に置き換わるものではないということもご理解ください。

インフルエンザにかかったら

どの病気にも共通して言えることですが、早めに治療し、体を休めることが大事です。早めの治療や休養は自分のからだを守るだけでなく、他の人にインフルエンザをうつさないという意味でも大変重要なことです。一般的には以下のような点に注意しましょう。

単なる風邪だと軽く考えずに、早めに医療機関を受診してアドバイスを受けましょう。
安静にして、休養をとりましょう。特に睡眠を十分にとることが大切です。
水分を十分に補給しましょう。お茶、ジュース、スープなど飲みたいもので結構です。

インフルエンザウイルスに対する治療薬の抗ウイルス薬は、医師が必要と認めた場合使用できます。ただし、昨年厚生労働省は抗インフルエンザ薬の10代への使用について、危険性を上回る患者さんへの利益がなければ推奨しないと発表しています。
また、インフルエンザには抗生剤(抗菌薬)は効きません。しかし、インフルエンザにかかったことにより、体力が低下して他の細菌にも感染しやすくなります。このような細菌の感染による肺炎や気管支炎などの合併症に対する治療として、抗生剤(抗菌薬)が使用されることがあります。

薬局で販売されている「風邪薬」は、鼻水や咳などの症状をやわらげるお薬ですので、インフルエンザウイルスや細菌を直接やっつけることはできません。

また、インフルエンザによる高熱に対して解熱薬を使用することがありますが、解熱薬の中にはインフルエンザにかかったときに使わないほうがいいものがあります。使用を避ける解熱薬として、アスピリンなどのサリチル酸解熱鎮痛薬、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸があります。家族が持っていたり、以前処方されていたお薬は、医師に確認してから使用しましょう。

最後に

インフルエンザは症状がひどいだけではなく、他の人にうつりやすい病気で、普通の風邪とは違います。小さなお子さんや高齢者、肺や心臓に持病がある方がいるご家庭では、インフルエンザ流行前にワクチン接種を受けることが必要です。

それと同時に、十分な睡眠やうがい、手洗い、マスクの着用、保湿などにも注意して、インフルエンザにかからないようにしましょう。

(国立感染症研究所感染症情報センターHPより抜粋、一部改変)

平成19年11月

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