一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • ロコモ(運動器症候群)について
  • 投稿者:山口整形外科クリニック 院長 山口 司

メタボ(生活習慣病)は、よく知られていますが、ロコモはご存知でしょうか。平成27年の時点で周知率は37%と言われています。ロコモとは平成19年に日本整形外科学会が提唱した言葉で「筋力、骨、関節、軟骨、椎間板などの運動器のいずれか、あるいは複数に障害が起こり、歩行や日常生活に何らかの障害をきたしている状態」と定義されます。簡単に言えば、足腰が痛んで、通常の生活に支障をきたしている状態です。
●ロコモの判定
ロコモかどうかを診断するためには、簡単なものとしてはロコチェック、評価法としてはロコモ度テストがあります。ロコチェックは以下の7項目の内一つでもあればロコモの可能性があります。①片脚立ちで靴下がはけない。②家の中でつまずいたり、すべったりする。③階段を上がるのに手すりが必要である。④家のやや重い仕事が困難である⑤2kg程度の買い物をして、持ち帰るのが困難である。⑥15分くらい続けて歩くことができない。⑦横断歩道を青信号で渡りきれない。ロコモ度テストは、①立ち上がりテスト、②2(ツー)ステップテスト、③ロコモ25(運動器に関する25の質問)の3つのテストから評価します。ここでは立ち上がりテストについて説明します。
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このテストでどちらか一方の片脚で40cmの高さから立ち上がれなければロコモ度1となります。両足で20cmの高さから立ち上がれなければロコモ度2と判定します。「ロコモ度1」は、移動能力の低下が始まっている状態。筋力やバランス能力が落ちているので、運動とバランスのとれた栄養摂取で移動能力を保つことが大切です。「ロコモ度2」は、移動能力の低下が進行している状態。今後、生活に支障が出てくる可能性が高く、特に痛みを伴う場合は何らかの運動器疾患を発症している可能性もあるとされています。
●ロコモの解決策
ロコモを予防するには、足腰の筋力を保つことが大切です。そのためにはロコモーショントレーニング(ロコトレ)など適切な運動を習慣づけることと、十分なたんぱく質とカルシウムを含んだバランスのとれた食事で、骨や筋力の強化を図ること重要となります。運動をすると、関節が動くことで関節液が循環し、関節の軟骨全体に栄養や酸素が十分に行き渡り、より良い状態を維持できます。よって、膝痛や腰痛の予防および改善につながります。また筋肉の両端は骨に接しているので、筋肉を鍛える運動は骨も動かし、骨に負担を掛けることにより骨の量が増加し、骨粗鬆症の予防にもなります。ロコモーショントレーニングは、バランスを鍛える「片脚立ち」と、下肢筋力をつける「スクワット」の2種類からなっています。
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いずれも高齢者でも実践できる簡単な内容で、筋力などの運動機能の向上だけではなく、変形性関節症の改善にも効果があります。道具や広いスペースは不要で、短時間で気軽に家の中で行えるため、日常的に続けることが可能です。またウォーキング、ジョギング、水泳、自転車、ジムトレーニングなど、趣味などで行っている運動を続けることも大切です。運動器を鍛えて、自立した、痛みのない生活が続けられるように頑張りましょう。

平成28年11月

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