一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 五十肩とは?
  • 投稿者:福岡志恩病院 整形外科 石谷 栄一

スーツを着ようとすると左肩が痛くて上がらない。寝るとき、左半身を下にすると痛む。
こんな症状に悩まされる中高年者は少なくありません。痛みは次第に増し、近くの病院で診察を受けたところ、レントゲン撮影では骨折は発見されず、「五十肩」と診断されました。

「凡、人50歳ばかりの時、手腕、骨節痛む事あり、程過れば薬せずして癒ゆるものなり、俗にこれを五十腕とも五十肩ともいう。また、長命病という」
江戸時代につくられた俗語辞典「俚言集覧(りげんしゅうらん)」には、そんな記述があります。当時の平均寿命は40歳程度とされるだけに、五十肩は長生きの証しと考えられたようです。この五十肩という俗語が現在でも普通に病名のように使われているのです。不思議ですね。

現在、「五十肩」「明らかな起因を証明しにくい初老期の疼痛性肩関節制動症」として定義されています。つまり五十肩とは肩関節の疼痛と関節可動域制限を主な症状とする疾患で、明らかな外傷やきっかけがなく徐々に疼痛(特に夜間痛)が出現し,肩関節の動きが制限されてくるものを言います。
通常、個人差はありますが半年から1年で症状は軽快します。ただし五十肩だからたいしたことないと思っている方の中に、肩腱板断裂・腱板炎・頚椎疾患などが隠れていることが少なくありません。一度、専門医を受診されることをおすすめします。
五十肩の治療は,痛みの強い時期は注射療法(ステロイド・ヒアルロン酸)などで炎症をおさえることが主となります。当院ではこの時期から理学療法で肩甲骨と胸郭、肋骨などの肩関節周囲のリラクセーションを開始します。自宅では肩を冷やさないように(冬場は部屋を暖かくして1枚余分に着衣する)気をつけてください。痛みが和らぎ関節可動域制限が主たる症状の時期には肩関節自体の理学療法が奏功するため,手術に至ることは少ないです。しかし頑固な痛み・可動域制限が継続する人の場合、手術することにより早期の除痛が得られ可動域拡大による日常生活動作が大変行いやすくなります.また五十肩と同様な症状でも,大きな外傷や骨折などに続発する拘縮(外傷性肩関節拘縮)や,糖尿病に合併した拘縮(糖尿病性肩関節拘縮)などがあります.
手術はすべて関節鏡視下に行ないます.5mm程度の創が2~3箇所で,硬く厚くなった関節包と言われる関節の一番内側の靭帯を,一周切離する方法です.(関節鏡視下関節包全周切離術:写真参照).頑固な症状で困っている方はご相談ください。


 
術前 : 挙上 40°        術後 : 挙上 150°

平成25年6月

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