一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 嘘のようなホントの話
  • 投稿者:聖和記念病院 院長 鎌谷 直人

1.治る高血圧
 外来でよく「今までにかかったことのある病気は?」とお尋ねすると、「昔は血圧が高かったけれど薬を飲んで良くなりました」という答えが返ってきます。
以前かなり太っておられた人が今は痩せられたとか、ものすごく塩気の高い物を食べていたが今は減塩食を続けている、といったような特別な場合を除いて、高血圧は残念ながら良くはならない病気のひとつです。なぜこういうような誤解があるのでしょう。
その理由は、風邪とか食べ過ぎによる腹痛などの急性の病気と、高血圧や糖尿病などの慢性の病気を、ごちゃ混ぜにしているからと思われます。急性の病気は良くなる病気で、治ってしまえば忘れてよいものです。
ところが、慢性の病気は決してよくならないために、薬や生活習慣の改善などの方法でうまくコントロールし、10年後20年後に合併症といわれる病気を起こさないように、一生付き合っていかなければいけないものです。
 「血圧の薬は飲み出したらずっと飲まなければいけないから、飲みたくないという言葉もよく耳にします。血圧の薬はそのようなまるで麻薬のようなものではなく、もう薬でしか血圧をコントロールできなくなった時期に到達したから、薬が始まるのです。

 

2.風邪に効く薬
明日から旅行だから、今日中に風邪をよくしてください。」と言われることがあります。これもウィルスと細菌(バイ菌)の違いをごちゃ混ぜにしていることから、そういう薬があると思われてお尋ねになられたと思います。
風邪の原因の20~30%は、抗生物質といわれる薬の効く細菌によるものですが、残りはほとんどウィルスと呼ばれる薬で殺すことの出来ない病原体によるものです。ウィルス性の風邪は皆さんの体力(免疫力)によって治っているのです。決して薬でよくなっているわけではありません。(最近はインフルエンザやヘルペスと呼ばれているウィルスに効く薬がありますが)私ども医者は、症状が軽くなる治療をしているだけなのです。(熱さましや咳止めなど)。
ここで誤解をされては困りますが、ウィルスによる風邪にかかると細菌も入りやすくなり、そうなると重篤になることがありますので、抗生剤を処方することもあります。

 

3.医者からもらうより、民間療法の値段の高いものの方が良く効く
最近ちまたに色々な健康食品や健康器具が満ち溢れています。それらは例外なく高価です。数万円から時には数十万円もします。効くか効かないかは私どももよくわかりません。でもここでよく考えてください。医者から処方するお薬は、保険があるから安く感じるのですが、保険が利かなければやはり数万円~数十万円払わなければいけないのですよ。

 

4.手術で胃をたくさん取ったから重症だった
手術で胃を切り取る大きさは、病気の重症度や進行度とは関係ありません。胃のどこに病気があったかに関係します。

 

5.平熱の低い人は体温が36度代でも熱が出ている。
はっきりとした研究やデータはありません。個人的な意見では人間の体温はそれほど違わないと思うのですが・・・。

 

6.痛風にはビールはいけないが焼酎は良い。
確かにビールに比べ焼酎のほうがデータでは尿酸を(通風の素)上げるものが少ないのですが、その何百倍もアルコールそのものがいけないのです。

 

7.貧血といわれたので高血圧は心配ない。
医者で貧血というのは血が薄い事で、血圧とはまったく関係ありません。貧血で高血圧のかたはたくさんいらっしゃいます。

 

8.においのある湿布薬のほうが無いものより良く効く。
気のせいです。効くと思わせるために、薬の会社がわざわざにおいの素を付けているのです。

 
9.世の中に副作用のない薬がある。
そんな薬はありません。どんな薬でも飲み方や使い方で毒にもなります。副作用の出やすい薬、出にくい薬は有ります。

 

10.痩せた人には肥満はいない。
肥満というものはただ体重が身長に比べ重いということだけではありません。筋肉に比べ脂肪がどのくらいあるかということなのです。ですからいくら食べ物を我慢して体重が減っても、運動をしなければ脂肪も減りますが筋肉も同じように減り、割合は同じになります。若い女性に多いのですが、食べる量だけ減らして運動をせずに痩せた方がおられます。そういう人のことを「痩せ型肥満といいます」。

 

11.甘いものが嫌いだから糖尿病の心配はない。甘いものを食べ過ぎると糖尿病になる。 
甘いものを食べ過ぎて肥満になっている方は糖尿病を心配してください。しかし甘い食べ物が糖尿病をおこしている訳ではありません。


12.糖尿病だから食べていいもの食べてはいけないものが決まっている。
まったくの誤解です。何でも食べる必要があります。問題は食べる量とそれぞれの栄養素のバランスです。

13.低血圧だから朝が弱い。
はっきりした証拠もデータも無いようです。

 

14.数秒たったからといって血圧は変わらない
血圧は常に変動しています。深呼吸をしただけで10~20くらいはすぐに下がることもあります。

 

15.胃下垂だから痩せている。
今では胃下垂という言葉は、あまり使われなくなりました。胃下垂は病気ではないということがわかってきたからです。胃が下がるので痩せるのではなく、痩せているからおなかの脂肪も少なく、胃が下がっているということのほうが本当のようです。それもバリウムを飲んで胃の検査をするときに、胃の動きを止める注射をしたときだけで、普通に食事をした時に胃はあまり下がっていないようです。

 

16.体を1周する胴巻きは死ぬ。
胴巻きのことをわれわれは「帯状疱疹」と呼んでいますが、私は1周した胴巻きを見たことがありません。ひどくなると1周はせずに水疱瘡のように全身に散らばるようです。

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