一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

井手胃腸科内科医院 院長 井手 一敏

  • 小腸内視鏡検査
  • 投稿者:井手胃腸科内科医院 院長 井手 一敏

小腸は数メートルもある長い消化管であり、口からも肛門からも遠いので、今までは内視鏡検査は困難とされ、通常はバリウムを使った小腸透視で診断されていました。ところが最近の内視鏡検査の進歩は著しく、ダブルバルーン内視鏡とカプセル内視鏡によって全小腸の内視鏡検査が可能となっています。

 ダブルバルーン内視鏡はスコープの先端とスコープ外筒の先端にバルーンを装着して小腸をたぐり寄せて短縮して挿入する方法で、胃内視鏡のように口からの経口的挿入による検査と大腸内視鏡のように肛門からの経肛門的挿入による検査の併用によって全小腸の観察が可能で、病理学的診断のために組織の一部を採取する生検や、ポリープ切除や止血などの内視鏡的治療も可能となっています。スコープは胃や大腸を通り越してさらに奥まで挿入されるので検査にともなう苦痛は想像がつくと思いますが、検査は1-2時間と長時間となるため鎮静剤、鎮痛剤の投与下におこなわれ、通常は入院して検査がされているとのことです。

 カプセル内視鏡は通常の内視鏡検査につきものの消化管の動きをおさえる鎮痙剤、苦痛を軽減する鎮静剤は不要で、観察するためにしぼんだ消化管を空気で膨らませる送気も不要であり、腸液の充満した小腸のなかを生理的な腸の蠕動にしたがって進んでいき検査に苦痛がないというところが第1の利点にあげられています。
 
 カプセル内視鏡検査のシステムはカプセル内視鏡本体とデータレコーダとワークステーテションかなっています。口から呑み込んだカプセル内視鏡で小腸内を撮影された画像が体外に装着したレコーダにワイヤレスで送られ記録されます。データレコーダの画像はワークステーションに転送され、ワークステーションにおいてビデオ画像に変換され読影、診断されます。
カプセル内視鏡本体は幅11ミリ、長さ26ミリの大きさのカプセルのなかにカメラと撮影した画像を送る送信機が内蔵されており、寿命が約8時間のボタン電池で1秒間に2枚、8時間で5-6万枚の拡大率8倍の静止画像を撮影できるとのことです。
データレコーダは腰に装着し、カプセル内視鏡の消化管内の位置を知るためのセンサーアレイのシールを腹部の表面8箇所に貼りつけます。24時間心電計の装着と似ています。
画像を解析するワークステーテションには画像解析を支援するコンピューターソフトを使うとのことですが読影は大変なようです。病変を見落とさないためには2人の医師による読影が望ましいとのことで、読影、診断にはある程度の時間もかかるようです。
カプセル内視鏡は高度の便秘などがない限り下剤などの前処置も不要で、胃内視鏡と同様に12時間の絶食した後に、データレコーダを装着して水とともにカプセルを呑み込みます。カプセルを嚥下して2時間後より水分摂取可能、4時間後より食事可能とのことです。電池の寿命が切れる8時間以降にデータレコーダを回収,読影します。検査は8時間という長時間にわたりますが検査中は自由に行動でき入院の必要もなく外来で検査可能とのことです。

 カプセル内視鏡は生検や内視鏡治療はできないのでサーヴェイランスと経過観察に、ダブルバルーン内視鏡は得られる内視鏡の画像はカプセル内視鏡よりも鮮明で生検や内視鏡治療ができるので精密検査や内視鏡治療にと使い分けされるようです

 カプセル内視鏡の適用対象は消化管出血があり、内視鏡をふくむ上部および下部消化管の検査を行っても原因不明の場合とされています。反復性顕性消化管出血例、持続性鉄欠乏性貧血例、便潜血陽性例で胃と大腸の内視鏡検査で出血源が分からない場合にカプセル内視鏡が小腸検査に使われます。カプセル内視鏡は口から入って肛門から出ますが再使用は出来ません。心臓ペースメーカーが埋め込まれている場合は検査出来ません。腸管の狭窄の場合もカプセルが通過できず検査出来ません。カプセルが2週間以上消化管内に留まる場合、カプセルは異物ですから体外に取り出さなければなくなります。しかし、カプセルが滞留してもダブルバルーン内視鏡ができる施設であれば内視鏡的に摘出できます。検査後は必ず肛門からのカプセルの排泄を確認するする必要があります。

ダブルバルーン内視鏡やカプセル内視鏡による小腸の内視鏡検査がされているのは大学病院などの病院に限られています。

カプセル内視鏡は画像を解析する装置であるワークステーションが高価なことと画像の読影、診断が大変であることを除けば検査自体は苦痛もなく入院の必要もなく外来で行える検査であり、今年の10月から保険適応とのことで、画像の解析を専門にする解析センターなどができれば一般の病院にも急速に普及するのではないかと思われます。

今回の話の内容は平成19年9月3日の独協医大の中村哲也先生による全国TV講演会の小腸用カプセル内視鏡PillCam SB よる小腸病変診断の実際および平成19年2月11日の第21回日本消化器内視鏡学会九州セミナーの九大の松本主之先生による講演の小腸疾患の内視鏡診断を参考にしています。

平成19年12月

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