一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 耳が痛いけど耳の病気ではない
  • 投稿者:たなか耳鼻咽喉科医院 院長 田中 久志

耳が痛くなる“耳の病気”の代表例は、「中耳炎」と「外耳炎」です
「中耳炎(特に急性中耳炎)」は風邪症状に伴って発症する事が多く、「外耳炎」は、耳そうじの時に外耳の壁を傷つけたり、水が耳内に入ったりして生じる場合が大半です。ところが、実際には「中耳炎」「外耳炎」以外で耳が痛くなる症例にもしばしば遭遇します
以下に「中耳炎」「外耳炎」以外で耳が痛くなり得る病気について記します。
(1)顎関節症:不正咬合(歯の咬み合わせが悪い)や顎運動の異常などが原因で、顎関節部の疼痛が生じる事があり、そのために耳が痛いと訴える場合があります。専門的診断及び治療は歯科(又は口腔外科)が行います。
(2)帯状疱疹:俗に「胴巻き」などとも言いますが、水痘・帯状疱疹ウイルスの感染症で、皮膚に発赤と水疱が生じて痛みを伴います。帯状疱疹が外耳~耳介に出来ると、かなり激しい耳痛が発生する事があります。診断・治療は皮膚科が担当します。
(3)耳下腺及び周辺のリンパ節疾患:おたふく風邪(流行性耳下腺炎)が有名ですが、種々のウイルス又は細菌感染や唾石・腫瘍が誘因となる場合もあります。
(4)三叉神経痛:耳を含めて顔面の知覚は三叉神経が支配しているため、三叉神経の機能不全に伴う耳痛・顔面痛が生じる例があります。専門科目は神経内科(又は脳神経外科)あるいは麻酔科(ペインクリニック)になります。
(5)頸椎疾患:頸椎の変形、ヘルニア、外傷など整形外科領域の疾患から時々
耳痛を訴えるケースもあります。
(6)上気道炎(特に扁桃炎)の場合、嚥下時の耳痛が生じる事がよくあります。又、鼻炎の際に耳閉塞感や耳の圧迫感が生じて、それを耳痛として感じる事も多々あります。
上述したように、耳痛の原因は必ずしも“耳の病気”だけではないという事を念頭に置く必要がある訳です。            

平成24年1月

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