一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 胃炎
  • 投稿者:田中まさはるクリニック 院長 田中 政治

胃炎には急性胃炎慢性胃炎とがあります。
急性胃炎は、さまざまな原因で起きる胃粘膜の炎症で日常的に起こりやすい病気です。例えば、コーヒーや緑茶などの嗜好品、唐辛子などの香辛料の摂りすぎ、風邪薬や鎮痛剤などの薬剤が原因となる場合もあります。多くの場合安静に過ごすと2~3日市販の胃腸薬を服用することで治りますが、症状の程によっては緊急に専門医の診断、検査が必要な場合もあります。急性胃炎を繰り返していると慢性胃炎になることもあります。
症状としては①胃のあたりの不快感や痛み、むかつきや嘔吐(時には吐血することもあります)食欲不振などです。
原因は先ほど述べたように大きく分けて刺激によるものと、感染症やアレルギーなど体の中のものが上げられます。
刺激によるものは
・アルコール、コーヒー、香辛料、冷たいもの、熱いものなどの刺激物の過量摂取
・薬(アスピリン、抗生物質、抗炎症剤、副腎皮質ステロイドなど)の副作用
・ストレス
・タバコの吸いすぎ
・不規則な生活
・強酸、強アルカリなどの腐食性薬物を飲んでしまったとき
体の中からのもの
・消化器の病気以外の感染症(風邪やインフルエンザなど)
・牛乳や卵、青魚などのアレルギー
治療は原因がはっきりしている場合は、その原因を取り除きます。その後は症状に合わせた薬を服用します。ですが激しい嘔吐、強酸、強アルカリなどの腐食性薬物を飲んだ時、感染症やアレルギーの場合には出来るだけ早く専門医を受診しましょう。

続いて慢性胃炎です。従来、慢性胃炎は「組織学的胃炎」、「候性胃炎」、「形態学的胃炎」といった複数の病態が「慢性胃炎」という病名のもとに、ひとまとめにされて診療、治療されてきました。ではそれぞれどんな胃炎なのでしょうか。日本は内視鏡検査やレントゲン検査が行われることが多くこの検査所見に基づいて慢性胃炎と診断された場合にはこれを形態学的胃炎と呼んでいます。また、その際の粘膜を取って調べた検査、血液検査、便、尿検査などで※ヘリコバクター・ピロリ菌が見つかれば組織学的胃炎となります。ところが内視鏡検査、レントゲン検査などでもなんら異常を認めない場合がありこれを症候性胃炎、機能性胃炎と呼ぶようになってきました。この症候性胃炎と組織学的胃炎で大部分の慢性胃炎が含まれることとなっています。
以上のことから症状が長く続く場合にはまず検査(できれば内視鏡検査)を受けピロリ菌がいないかどうかを診断し、存在すれば除菌治療を行えば慢性胃炎を克服することが出来るわけです。また、症候性胃炎、機能性胃炎と診断された場合でも消化管運動機能が落ちています。この機能を回復、向上させる薬剤も出現していますのでかかりつけ医に相談し根気強く治療を行いましょう。

※ピロリ菌について
 正式な名前は「ヘリコバクター・ピロリ菌」といいます。約3μm(1μmは千分の1ミリメートル)のらせん状の細菌で、数本の鞭毛を回転させてまるでヘリコプターのように活発に動き回り、人の胃の粘膜や細胞の間に入り込んで炎症を起こします。
 この菌はすべての人の胃にいるわけではありません。日本では生活環境の整備により30歳代以下の人は感染率が低いのですが40歳以上では70~80%の人が感染しています。感染は主に口から感染しますが、感染経路は現在でもはっきりしていません。しかし、免疫能力が不完全な幼少期に感染が起こり、成人は感染する機会はほとんどないと考えられています。
ピロリ菌は胃潰瘍・十二指腸潰瘍が起こる原因の一つですが、感染している人すべてが必ず潰瘍になるわけではなく感染者の内、約2~3%の人が潰瘍になっています。しかし、逆に胃・十二指腸潰瘍の人のうち約80~95%が感染しており、ピロリ菌は潰瘍の原因として大きな比重を占めています。また、潰瘍の他にも胃癌、胃MALTリンパ腫(胃の腫瘍の一つ)、特発性血小板減少性紫斑病(出血しやすい病気)、萎縮性胃炎、胃過形成ポリープ、機能性ディスペプシア(上部消化管症状の総称で癌や潰瘍などのはっきり分かる病気は除きます)、逆流性食道炎、鉄欠乏性貧血、慢性蕁麻疹に関係していると言われています。
ピロリ菌が引き起こす病気を予防するため、胃カメラや呼気・尿・血液検査等を行い、感染していたら除菌を行う活動がすすめられています。

平成27年4月

 

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