一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

協和病院 院長 亀井 英也

  • 喫煙と健康
  • 投稿者:協和病院 院長 亀井 英也

喫煙が健康に大きな影響を及ぼすことは、すでに広く知られています。さらに最近では、喫煙が喫煙者のみらず、タバコを吸わない周囲の人への健康にも様々な影響を及ぼしていることが明らかとなり、大きな社会問題となっています。 そのため現在では、公共の場では勿論、職場や多くの人が集まる場所での禁煙や分煙が推進され、喫煙場所を限定するような注意書きを頻繁に目にするようになりました。

タバコの煙は、喫煙者が吸い込む白い主流煙と点火部分から立ち上がる副流煙とに区別されます。
 一般に副流煙はアルカリ性で刺激が強く、主流煙より高濃度の発癌物質やその他の有害化学物質を多く含んでいるといわれています。
非喫煙者は両方の煙を間接的に吸う、受動喫煙者の状態で、これが今日問題になっています。

 

受動喫煙者への影響は、鼻腔や気道の粘膜、眼球結膜への刺激症状などの急性影響と慢性影響に分けられます。
慢性影響は妊婦が喫煙すると母胎内の胎児が影響を受け、流産、早産、低体重児の頻度が高くなることが報告されています。ちなみに家族特に母親が喫煙者である場合は、幼児や学童の喘息様気管支炎の率が高くなっています。
 成人に対する受動喫煙の代表的な疾患は肺癌で、他に脳腫瘍、副鼻腔癌、慢性閉塞性肺疾患などがあります。

タバコは吸ってる本人のみならず、その煙を吸ってしまう周囲の人にも色々な臓器に障害をもたらし、喫煙関連疾患を引き起こす危険性があるのです。

続いて当の喫煙者自身の健康への影響も、急性と慢性に分けられます。 
急性影響では咳や痰などの呼吸器系症状の他に、血圧上昇、心拍数増加、手足のしびれ感・冷感などの循環器系症状、そして食欲低下、口臭などの消化器系症状が知られています。
 慢性影響では呼吸器系の咳や痰などの症状から、だんだん慢性気管支炎へ、さらには肺気腫へと進行し、いわゆる慢性閉塞性肺疾患を引き起こします。循環器系では狭心症心筋梗塞などの虚血性心疾患大動脈瘤、末梢血管閉塞症、脳血栓、くも膜下出血が喫煙者に多いといわれています。
 消化器系では口腔に様々な悪影響を及ぼし、粘膜病変、歯や歯周への色素沈着、口臭があり、最近では特に歯周病と喫煙との因果関係が注目されています。また、胃十二指腸潰瘍にかかりやすいことは周知の通りです。
 癌に関しては、肺癌を第一に、口腔・咽頭癌、喉頭癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、腎盂癌、尿管癌、膀胱癌、子宮頸癌などが喫煙関連疾患とみなされています。
またこれらの他に、睡眠障害脳萎縮、白内障、免疫力低下なども喫煙との関連が報告されています。
 
このように喫煙によって、多くの喫煙関連疾患が引き起こされていますが、その予防と治療には、やはり“禁煙”が最も重要です。私たちは健康を維持していくためにも、禁煙対策を講じ、きれいな空気の中で生活できるよう、力を合わせていきたいものです。

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