一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • iPS細胞による加齢黄斑変性の治療
  • 投稿者:広瀬眼科医院 廣瀬 晶一

iPS細胞とは

iPS細胞とは「万能細胞」と称され、ヒトのあらゆる細胞になり得ます。ヒトの皮膚などの細胞に遺伝子を入れて人工的に作った細胞のことで、まだ人間の子宮の中でいろいろな細胞に分化する前の状態と同じような能力を備えています。子宮内で起こっていることと同じようにヒトの細胞や組織、臓器などを作り出すことができます。

再生医療による加齢黄斑変性の治療

hirose-s20160102眼球の一番奥にある網膜の中心にある部分を黄斑といいます。加齢によって網膜の下に老廃物や血液成分がたまり、網膜の色素上皮細胞が損傷され黄班の機能を阻害がおこり、見ようと思っているところが暗く見えたり、歪んで見えたりし、そのうち次第に見えない範囲が大きくなっていくのが加齢黄斑変性です。加齢黄斑変性は増加傾向にあり、徐々に萎縮していく萎縮型と、異常血管(新生血管)ができてくる滲出型があります。

日本人に比較的多い滲出型の治療は現在①レーザー光凝固術(レーザーの光を新生血管のところだけに集約して当て治療するという方法。)②抗血管新生療法(新生血管を発達させる血管内皮増殖因子を抑える薬を眼球に注射することで、新生血管自体を治すという方法。)等が主に行われていますが、現在更によい治療法として網膜再生医療に対する期待が高まっています。

hirose-s20160101加齢黄斑変性の原因は黄班部の網膜色素上皮細胞の損傷です。そこで、iPS細胞作製技術を用いて、患者さん自身の細胞から網膜色素上皮細胞を再生し、網膜下の損傷した部分に移植することで、視力の改善や病状の進行を抑制できるのではないかと考えられています。現在、加齢黄斑変性(滲出型)のみを対象とした臨床研究が始まっています。

この治療の目的は、「視力を正常に戻す」ということではなく「それ以上の進行を止める」ことです。しかし現在の標準的な治療法である抗血管新生療法やレーザー光凝固術でも進行を完全に止めることが難しい場合も多いため、iPS細胞による網膜再生医療の発展が期待されています

平成28年1月

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