予防接種マニュアル (小郡三井医師会会員用)

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任意予防接種をどうするか

(1)おたふくかぜワクチン  
 おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)は耳下腺腫脹を主症状とする疾患ではあるが、耳下腺ばかりでなく、その他の唾液腺のほか、内分泌系、神経系など各種臓器に多彩な病像を形成する全身性感染症である。ときに耳下腺腫脹をきたさずに無菌性髄膜炎を発症することもある。  おもな合併症は、膵炎(6%)、髄膜炎(2ー3%)、髄膜脳炎(0.02%)、難聴(0.01%)と重篤なものもみられる。また思春期以降におたふくかぜにかかった場合、14ー35%に睾丸炎、副睾丸炎の合併(男性不妊の要因として関心が高いが、実際、両側睾丸の完全な機能廃絶まで至るものは少ない)がみられる。  
 予防接種により約90%に抗体獲得が得られる。しかし予防接種をしていてもおたふくかぜに罹患することがあるが比較的軽症で経過することが多い。また、おたふくかぜワクチン接種による副反応は少なく、報告によっては2ー3%までに、接種後2ー3週間に一過性の耳下腺腫脹や発熱がみられる。ワクチンによる無菌性髄膜炎の頻度はMMRワクチンの頃には1000人に1人であったが、単独ワクチンによっても数千人に1人の割合でみられる。しかし自然罹患による無菌性髄膜炎の頻度は2ー3%(髄膜刺激症状は10-15%)とはるかに多い。  
 したがって、子どもの苦痛、合併症の心配を考えれば、医師として予防接種を勧めることが妥当であるとおもわれるが、最終的には親の判断にまかせる

(2)水痘ワクチン  
 水痘ワクチンは当初、水痘に罹患すると致命的な合併症を併発する白血病、悪性腫瘍、ネフローゼ症候群といったハイリスクの小児を対象に接種されてきたが、その後健康小児への接種が一般化してきている。健康児が水痘にかかったばあい重篤な合併症は特になく、ワクチンを接種しておかないと心配な病気というわけではない。ただ1週間ほど集団生活ができないという不自由や場合によっては痕が残るという心配はある。このワクチンはきわめて安全でありほとんど副反応がみられない。
 ワクチン接種後の抗体獲得は90ー95%である。接種者の10ー15%に発症の報告があるが、非常に軽症であり、ほとんど発熱もなく水泡の形成も少なく2ー4日で痂皮化し治癒する。また、患児に接触後3日以内に接種すれば80%で発病の防止や症状の軽減化が期待できる。  現在、治療薬である経口アシクロビルの予防投与(発症の前から飲ませる)で良好な結果が得られているが、免疫の獲得という面で論議のあるところである。罹患早期の経口アシクロビル内服も症状の軽症化が期待できるがワクチンほどの効果はなく、軽症であっても治癒までの期間の短縮化はあまり期待できない。  
 水痘は対症療法でもさほど心配な病気ではなく、アシクロビルの登場により軽症化も期待できるようになった。したがって1週間も休めないという場合や痕の心配をするお母さんには子どもへのワクチンの接種を勧める

(3)インフルエンザHAワクチン  
 現行の不活化HAワクチンは、血中抗体価の上昇は十分に得られるものの咽頭局所での免疫産生が弱く、感染後の上気道でのウイルス増殖を阻止するのに十分でなく、発病や流行を完全に防ぐことはできないという報告がある。しかしウイルス血症にたいしては抗体が働き、発熱や咳および咽頭痛といった臨床症状を軽減化する効果は認められている。また、インフルエンザワクチンを受けている人で、脳炎や脳症などの重篤な合併症を起こした人はいないという。これは予防接種により抗体が血中に存在すれば、ウイルス血症以降の進行をくい止め脳炎、脳症の合併も阻止すると考えられる。すなわち、流行や発症をくい止められなくても、症状の軽減化や重症化防止という意味においては、十分な効果が期待できる。実際、老人においてインフルエンザによる入院や死亡の防止効果は70ー90%といわれる。したがって重症化を防止する効果は明らかであるため医師会としてもワクチンの接種を推奨することが望ましい。  
 副反応としては、局所の腫脹や発赤、まれに発熱などがあるが通常2ー3日以内に消失する。また注射液に卵成分が含まれるため、それらに対する重症なアレルギーが考えられる場合は慎重を要する。ゼラチンアレルギーのある場合は、ゼラチンが含まれないメーカーのものを選択する必要がある。

 最近、抗インフルエンザ薬としてアマンタジンが認められた。しかし小児にたいする安全性、有効性は確認されておらず、現時点における予防は現行の不活化ワクチンのみである(1999年4月現在)。