一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 小児の弱視治療を見守ってください
  • 投稿者:広瀬眼科医院 院長 廣瀬真恵

皆さんにお尋ねします。
公園や保育園、または街中で、片方の目に大きなアイパッチを貼って眼鏡をかけた子供を見かけたことはありませんか。
どうしたのかしらと思いながら親御さんにも尋ねることはできずただ見つめるだけだったことはありませんか。
おそらくその子供たちは、視力を成長させようと、一生懸命にがんばって治療している、弱視の子供たちです。
3歳で治療を始める子もいますし、小学1年生になって初めて治療開始した子もいます。多くは強い遠視や乱視などのためにメガネなしではぼやけた像しか見えませんので小さいうちからめがねをかけて視力の成長を助ける必要があるのです。極端に強い度数だったり、片方の目だけが強い遠視だったりすると、その目は鮮明な像を写しませんから物を見る力(眼と脳との共同作業です)が発育しないまま大人になってしまいます。見る力(視る力)は子供のうちに発育させておかないと後では取り返しがつきません。よって治療中の子供たちは今が一番大切な時期といえます。

 実は見る力(視る力)は視力だけではありません、色彩やコントラスト、両眼でわかる物の奥行きや立体感、注視視野などです。すべての力がごく自然に、当然のように、私たちはあると思い、又、実際に意識することなく毎日その力を使って暮らしています。ところがその大部分が幼少よりの日々の暮らしの中で、外界から目に入る刺激によって培われるものであることは紛れもない事実です。このことは非常に大切なことで、私たちは物を見て眼底に映像を写し、それが何を表すものであるかを脳で認識するわけですから、子供のときにこの過程に何か邪魔するものがあると視る力が成長しません。遠視が強かったり、片眼だけ度数が強かったりするとその眼には鮮明な像が写らないので、はっきりした像を写して脳に認識させるために眼鏡が必要になります。又すでに片方の目が視力不良の状態(弱視)になっていると、健康眼遮蔽(アイパッチ)をして見えにくい眼にだけ物を写すことで視力の発育を促すのです。古典的な治療法ですが今もこの方法が最も効果があります。

周りの大人たちの勝手な思惑で必要な眼鏡をかけさせなかったり、「こんなに小さいのに眼鏡をかけているのね」と安易に言葉を投げかけたりすると、一生懸命がんばっている子供たちは治療を続ける元気がなくなり、成長の大切なチャンスを失ってしまいます。これは取り戻せない貴重な時間なのです。親御さんや、又誰よりも子供本人が、つらい我慢をしてがんばっています。周りの方たち、幼稚園や保育園、学校の先生たちにお願いです。弱視治療の大切さをぜひ理解して応援してあげてください。ほかのお母さんたちにもお願いです、ご自分のお子さんのお友達に同様の治療中の方がいましたら、子供さんたちと一緒に眼の大切さを話し合ってください。
弱視の治療は長い時間がかかりますが、本人だけではがんばれませんので、周りの皆さんの暖かい応援が必要です。どうぞよろしくお願いしますね。

 

平成22年1月

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