一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 近視抑制治療について
  • 投稿者:広瀬眼科医院 廣瀬 晶一

Ⅰ 近視とは
近視とは目に入った光(映像)の焦点が網膜よりも手前にある状態ではっきり見えない状態です。
近視が進行すると強度近視の合併症である近視性黄斑症・緑内障・白内障・網膜剥離等の発症リスクが増加します。
眼球は体が成長する時期に伸びることが多く、低年齢のころに早く伸びる可能性があるため、小学生の成長期に早期から対策を始めることが、将来の強度近視や眼疾患リスクの低減につながります。

 

Ⅱ 近視発症の要因
近視発症には遺伝的要因と環境的要因が原因として挙げられます。

 

「遺伝的要因」
両親ともに近視でない小児と比べ片方の親が近視の場合は約2倍、両親とも近視の場合は5~6倍になることが報告されています。生まれつき眼軸長(目の奥行)が長い、または伸びやすい体質の人は近視になり易いとされています。

 

「環境的要因」
近年、子どもの近視が急増している主な原因は生活環境の変化です。パソコン・タブレット・スマートフォンの長時間の使用が問題視されています。近くを見る時間が増えると、目の水晶体が膨らんだ状態が続き、目(眼球)の奥行が前後方向に伸びやすくなります。これが近視の進行につながります。また、屋外活動時間の減少も近視のリスクを高めます。自然光に含まれるレッドライトを浴びることで、眼軸の過剰な伸長を抑制する効果があります。

 

Ⅲ 近視抑制
遺伝的・環境的要因があり著しい近視進行の可能性がある場合は、特に早い段階(小児期)からその進行を可能な限り抑制し将来の強度近視や近視に伴う眼合併症の発症率を低下させるのがこの治療の目的です。
近視の進行を抑えるには、生活習慣改善と医療的介入を組み合わせた方法が有効です。下記の方法は単独でも効果がありますが、生活習慣改善と医療的治療を組み合わせることで、より高い近視進行抑制効果が期待できます。

 

1. 低濃度アトロピン点眼
低濃度アトロピン点眼(0.01%~0.05%)は、近視進行(眼軸の増大)を初年度で30~70%抑制できることが報告されています。副作用はほとんどなく、瞳孔の拡大や手元のピントの不調もぼ起こりません。日本では2025年春から、濃度0.025%の「リジュセア®ミニ点眼液」が承認・販売され、就寝前に1日1回点眼するだけで手軽に継続可能です。特に小学生頃から開始すると、将来の強度近視リスクを大きく下げられると期待されています。

 

2. オルソケラトロジー(Ortho-K)
オルソケラトロジーは、夜間に特殊なハードコンタクトレンズを装用して角膜の形状を変え、網膜周辺部に近視性デフォーカスを作ることで眼軸の伸びを抑制します。これにより、近視の進行を30~60%程度遅らせる効果が報告されています。日中は裸眼で過ごせるため、スポーツやプールでも快適ですが、衛生管理が重要で、適応検査が必要です。

 

3. EDOFコンタクトレンズ(焦点深度拡張型)
重焦点や焦点深度拡張型のコンタクトレンズも、遠くと近くの焦点を調整することで近視進行(眼軸増加)を抑制します。

 

4. 多焦点コンタクトレンズ
遠近両用設計のコンタクトレンズは、網膜周辺部のピントを調整し、近視進行(眼軸増加)を抑える効果があります。

 

5. 特殊設計のメガネレンズ(DIMSレンズなど)
海外で開発された近視管理用眼鏡(MiYOSMART®やStellest®など)は周辺部の網膜に焦点を手前に合わせる光学設計により、近視進行(眼軸増加)を抑制することが報告されています。日本でもガイドラインが整備され、販売が開始されます。

 

6. 屋外活動
1日2~3時間程度の屋外活動は、自然光の刺激(レッドライト)により眼軸の過度な伸長を抑える効果があるとされます。特に成長期の子どもに推奨されます。

 

 

7. 生活習慣の見直し
長時間のスマホやタブレット使用を避け、読書や画面作業の際は30-30-20ルール(30cm以上離す、30分ごとに、20秒間遠方を見る)を実践することで、眼精疲労を軽減し近視進行を抑えられます。適度な休憩や遠くを見る習慣も重要です。

 

8. その他の方法
レッドライト療法:低出力赤色光照射により近視進行を抑える。

 

Ⅳ まとめ
近視抑制治療は近視の進行を抑制するものであり、進行が止まる、また改善するのでもありません。どの治療も完全な保険診療ではなく自由診療(自費)を含むため、治療開始、継続において金銭面など負担が大きい部分があります。治療を始める際は、必ず眼科で検査・相談を行い、個々の年齢や生活習慣に応じた方法を選ぶことが推奨されます。また屋外活動を増やすことや生活習慣の見直し(近見作業時の姿勢や休息)などは自宅でできる予防策となります。

 

令和8年8月

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